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藤巻舎人 脳内ワールド

藤巻舎人の小説ワールドへようこそ! 18歳以下の人は見ないでネ

   

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私立日高見学園(10) 児屋根春日

矢、なんてものは、案外TVや映画の中に溢れているもので。
大掛かりな映画だと、何千本もの矢がCGで表現されて、一斉に放たれ降り注ぐなんて映像もよくみかける。
あるいは弓道などをやっている人は、日常的に弓矢を扱う訳だし、何かの祭事なんかでは矢を射ることもあるだろう。
でも、実際の現実世界で、目の前の地面に矢が飛んできて突き刺さるのを目撃するのは、かなり特異な体験なんじゃないだろうか。
しかも、その事象にはいろんな意味が明確過ぎるくらいに込められているはずで。
だいたいにおいて、人に向けて矢を射るということは、その対象を殺傷するために行われる。
そうじゃなくても、威嚇、脅し、といった並々ならぬ強烈な意志がそこには表されている。
そして今の現状は、威嚇なのか、それても偶然外れただけで確実に殺傷を目的として放たれたものなのか、しかしどちらにしろ、この矢が放たれ意味は、友好的なものではないことは確実だと思う。

自分の足元に矢が突き刺さった奇杵襲さんは、後ろの僕と奇杵語さんに止まれの合図を出したまま動かない。
いや、動けないんだ。
空気が張りつめているのがわかる。
まるで触れれば切れる糸が張り巡らされているみたいに。
と、いきなり襲さんは腰の日本刀を目にも留まらぬ速さで抜き切った。
その瞬間、空中で『バキッ』という乾いた音がして、地面に真っ二つに折れた矢が落ちた。
襲さんは、単に刀を抜いただけでなく、居合のように矢を切り落としたのんだ。
第二の矢が射られた。
しかし襲さんは一歩も動いていなかった。
ということは、矢を確実に当ててきている。
当たれば、刺さる。肉に突き刺さる。骨を砕く。
当たり前だけど、怪我をする。痛みに襲われる。
下手したら、死ぬほどの重傷を負うかもしれない。
そんな剥き出しの敵意を、殺意を込められた攻撃を受けた。
僕は底知れぬ戦慄と恐怖を覚えた。
脚が、震えている。

堰を切ったかのように立て続けに矢が正確に襲さん目がけて飛んできた。
襲さんもそれに応じて、刀で飛んできた矢を叩き落とす。
いささか人間離れした反応で。
弾丸とまではいかなくても、飛来する細い矢を、あんな風に連続で打ち払うことは可能なのかな?
「駄目だ!! 防ぎきれない!! 相手も『ハヤテ』だ!!」
襲さんは背後の僕達、というより双子の弟の語さんに向かって叫んだ。
ウソ、無理っぽいのかな、ていうか『ハヤテ』って何?
そんな細かい事気にしてる場合じゃない。
盾となってくれている襲さんがもたないとなれば、次に矢で串刺しにされるのは僕だ。
ていうか襲さん串刺し前提で考えてる自分がちょっと怖い。
腹黒いって言われても仕方ないか。
余計な事を考えて現実逃避している間にも、矢は飛んできて襲さんを襲撃している。
「春日君、退くぞ!!」
僕の後ろから語さんが呼びかけてきた。
だけど、脚が、動かないんだ。

恐怖で脚が震えて力が入らない、動かない。
膝が笑ってるってこいうことなのかな。
そんな僕の状態を察してくれたのか、語さんは腕を掴んで無理矢理牽いて背後の丈高い草むらの中へ退こうとした。
とそこへ、逆に草間から二人の男が躍り出てきた。
前に矢の雨、後ろからは日本刀を構えた男達。
「挟まれた!!」
そう語さんが言ったかどうだか分からないけど、強烈にその意識を共有していると確信が持てた。
間髪入れずに問答無用で男達は切りかかってきた。
すべてがスローモーションに見える。
自分の体も思うように動かない。
まるで夢の中。
なのに意識ははっきりしている。
僕は日本刀を持った男達を観察する。
戦国時代やそれ以前の時代を題材にした大河ドラマに出てくる武士のような格好をしている。
しかも刀。
どういうことだ?
まぁ学園ブレザー姿に日本刀を携えている奇杵兄弟だってどういうことだ?って感じなんだけど。
と考えている内にも現実は確実に動いている。
男の上段からの一撃を語さんは刀で受ける。
同時にもう1人が語さんの腹部を一突きに刺す。
背中から貫いた切っ先が見えてギョっとした。
語さん!!
そう声に出す間も無く、語さんに再び片腕を掴まれ、人の背丈ほどの高さに生い茂る草むらの方へ引っ張られた。
刺されたお腹を心配したけど、血も出ていなければ制服にも傷1つついていない。

「止まれ!! 逃げられんぞ!!」
草の中へ逃げ込めれば、という思惑は潰えた。
お腹を刺し貫かれたのに平気だ、という相手の驚愕を隙に逃走を図ったてはみたものの、というか僕は語さんに導かれただけなんだけど、驚異の素早さで刀を持った男が僕達の前に立ちはだかり、後ろにもう1人という挟み込まれた状態に陥ってしまった。
最悪だ。
僕の腕を掴む語さんの手にグッと力が入る。
その震える手は、怒りか絶望か・・・










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私立日高見学園(9) 瓜生襷

明日から夏休みだという七月の真昼。
オレと面足千万喜は住宅街の路上に立ち尽くしていた。
錦のバイト先と学校との間。

「で? どうするんですか?」千万喜はニヤニヤしながら言った「なにか考えでも?」
そう。
このまま歩いて学校まで行っても、なんの手がかりも掴めなければ無駄足かもしれない。
何も得るものが無い方が可能性が高いかもしれない。
そう、このまま行けば、な。
「ああ、こんな時のために、手を打っておいたんだけどな・・・・、って来た来た」
オレ達がやって来た方を向くと、Tシャツにジーンズ姿の男がこちらに追いついてきた。
「おせ~よ」
「待ち合わせ場所に行ったら居ないのはそっちだろ~?」
「おせぇから先に行ってたんだよ」
「遅いって10分じゃん」
「この炎天下で10分も待てるか」
「あの~どちら様で?」
ようやく合流した奴に、あからさまに不信な顔をして千万喜がオレに訊いた。
「ああ、紹介するよ。コイツは色上清河(イロノエ キヨカワ)。大学2年だっけ?」
「おい、コイツ言うなコイツ」
と言いながら清河はオレを引っ張って、耳打ちする。
「瓜生、こ、この子なのか? いや、この子だよな? 紹介してくれるって言ったのは」
「ちゃんと手伝って成果を上げたらな」
「まじ? めっちゃタイプなんですけど。尖がり短髪でちっちゃくてしかも色黒!」
「紹介するだけだよ。後のことは知らん」
「もしかして中学生? DC?」
やっぱうっぜぇ、コイツ。

「てかあの、ボク抜きでなにコソコソ話してるんですか☆」
ニコニコしながら千万喜が近づいてきた。
「おぅ、悪ぃ悪ぃ。そしてこっちが面足千万喜。これでもれっきとした高1だ」
オレは清河に紹介した。
「よろしくお願いします。清河さん☆」
相変わらずの笑顔で千万喜が手を差し出し、清河と握手した。
「ちょちょちょ、瓜生瓜生瓜生」
清河はまたオレを千万喜から引き離して小声で言う。
「ちょっと、あの子怖くね? なんか怖くね?」
「はぁ? どこがだよ~」
「え、そう? 大丈夫かな。なんか一瞬本能的に恐怖を感じたっていうか・・・」
あ~面倒臭ぇ。適当に誤魔化して早く錦捜索を手伝わせなきゃな。
「なんだソレ? あれじゃねーの、運命感じちゃったんじゃねーの?」
「あ、ソレかな。やっぱソレかな。きっとソレかな」

どうして高1のオレがこんなウザいショタ好きな大学生なんかと知り合いなのかはまた別の話で。
「で? タスキさん☆ この人はいったいどんな役に立つんですか?」
ブッ。
どんな役に立つんですか、ってなんか既に下僕みたいな扱いでウケる。
「それはな、こいつの目だよ」
「あれ? そういや瓜生、ボクっていったい何見つければいいの?」
「あぁ? 今更なに言ってんだよ」
「ていうか聞いてないし、まだ」
いい加減暑いな、こんなとこで清河の天然に付き合って立ち話してる場合じゃないんだけど。
「オレの友達が行方不明なんだ。待ち合わせした新聞社から高校までの間に何らかのトラブルに巻き込まれた可能性が高い。だからお前の目で見て、ほんのちょっとでもおかしな所があったら言ってくれ」
「よ~しわかった、ガッテン承知。いいね、友達の為っていうのがいいね」
両手で拳を作ってガッツポーズをして気合を入れる清河。
あんまり頼りたくねぇ奴だけど仕方ない。
まぁ、良い奴ではあるんだけど、ただ面倒なだけなんだけどね。





私立日高見学園(8) 棚機錦

「お~い、あの~、すみませ~ん」
何度か声を張り上げてみたけど反応が無い。
ったく、無駄な体力使わせんじゃねーよ。
「あの声だけ野郎はいない、のかな?」
試しに呟いてみたけど、静まり返っている。
よし、今しか無い!!
俺はベッドから立ち上がり、静かに素早く移動し、この透明な檻の中にある、
なんの衝立てもない便器の前に立った。
よし、イケる!!
真っ白な検査着みたいなズボンを下ろし、勢い良く放尿する。
はぁ~、気持ちいい~。
「ところで棚機錦君」
突然例の声が響き渡った。
「退屈ではないかね?」
最悪のタイミングだ。
なにこれ、狙ってたろ。完全に俺がションベンする機会を見計らって声かけたろ。
我慢していた末の放尿の快感も途中立ち消えとなり、モヤモヤした気分で雫を切ってズボンを上げた。
「ずっと居たのかよ」
洗面台で手を洗いながら言った。
「いやいや偶然偶然」
ホントかよ。こいつは信用ならない。
「偶然戻ったら、君がカワイイ仮性のペニスを出して放尿していたんだよ」
注目する視点が完全におかしい。
それ以前に話しかけるタイミングに作為と悪意を感じる。

「退屈していないか、だって?」
俺はまたベッドの上に戻った。
「なんかテレビとかゲームとかないの? せめて本や雑誌くらい」
「ふん。まぁ考えてみよう」
声は言った。
社交辞令みたいに当てにならないけどな、この声のことは。
「それよりも、話をしようじゃなか」
「はぁ? なんで」
「なんでって、どうせヒマなんだろ?」
こんな状況に追い込んだのはオマエラだろ!! って言ってやりたかったけど、監禁され相手も見えないのに議論吹っかけても無駄なので止めておいた。
いつまで続くかわからないんだ、なるべくセーブしていかなきゃな。
「話すっていったいなに話すんだよ。あんたのことなにも知らないのに」
「君が話せばいい」
「はぁ? 俺がぁ?」
「そう。例えば・・・」
そこで声の主は言葉を止めた。
奇妙な間が出来た。
何かしら不安にさせる空白。
ずっと考えて用意していたことを見せつけようとする瞬間。


「そう、例えば、君の父親のこと、とか」






補足(3)

【設定&登場人物紹介】



>星辰会

どうやら異能力者を中心にして構成された集団らしい。傭兵的な活動をしている。
結構名前は知られているが、実態は不明。
メンバーは星辰にちなんだコードネームで呼び合っている。
能力と名前に関係性は無いようだが、関係付けている者もいる。
判明している構成員。


☆十曜(ジュウヨウ)
本名は奇杵冷(クシキネ スズシ)
奇杵家現当主、唱(トナウ)の異母兄弟。数年前に家から離脱。
その時御祖家から妖刀「荼毘丸」を持ち出している。
能力は明らかになっおらず、抗精神感応体質らしい。



☆妙見(ミョウケン)
詳しくは分かっていないが、どうやら空間操作の異能を持つらしい。
十曜が日高見学園大学のキャンパスから脱出する手助けをしている。
第四章でも名前が出てくる。



☆昴(スバル)
別名マジックミサイル。
青白いプラズマエネルギーをミサイル状にして打ち出すことから付いた名前。










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HN:
藤巻舎人
性別:
男性
趣味:
読書 ドラム 映画
自己紹介:
藤巻舎人(フジマキ トネリ)です。
ゲイです。
なので、小説の内容もおのずとそれ系の方向へ。
肌に合わない方はご遠慮下さい。一応18禁だす。

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