警察の特殊部隊、SATが体育館に突入してきたり、大勢の機動隊や警察官がなだれ込んできたりして、すべてが終息へと向かっていった。
その後、生徒の家族や避難した生徒や教職員なんかでごった返し、しまらく校舎校庭は騒然としていた。
終わった。
すべて終わったんだ。
長かった。
ホント長かった。
そして、良かった。
みんな無事で。
龍樹先生も含めて。
あの先生、デタラメもいい加減にして欲しい。
「ヘイ、YO!!仔羊ちゃんたちぃ、無事だったカイ☆」
とか言いながらやってきて、ウチ等のクラス全員仰天していた。
「ええええwwwwww!!!! 先生頭吹っ飛ばされて死んだんじゃないのぉぉ???」
って突っ込まれててたけど、
「ああ、あれね!! ハリウッドに居る友達に習った特殊メイクだYO!!」
とかのたまっていた。
なんなんですか、そのおかしなノリは。
だけど恐ろしいことにみんなそれを信じてしまっていた。
なんでだYO!!!
あ、失礼。
染つりました。
みんな信じ込み過ぎなんじゃないかな。
世の中ウソや出鱈目や大袈裟な情報って多いんだよ?
鵜呑みしちゃいけないんだよ。
信じちゃいけないんだよ。
「ヘイ!!ユー、ドウシチャッタンデスカ? シンミョーナカオシテ」
そう言いながら龍樹先生が後ろから僕の頭の上にポンと右手を置いた。
「・・・・、いきなり片言の日本語にならないで下さい」
「まぁまぁまぁ」龍樹先生は僕の頭をなでなでする「君も随分頑張ったじゃないか」
「・・・・・」
「なんだい? 照れてるのかい? カワイイねぇ」
「そ、そんなんじゃないです!!」だいたい、あの時佐伯君の所に出て行ったのは先生に無理矢理引っ張られて背中蹴られてだったし「・・・それに、先生がカワイイとか言うと、なんかいかがわしいです・・・」
「いかがわしい? うん、実に良い褒め言葉だ!!」
先生は誇らしげに言った。
僕なんて、何も出来なかった。
ただすべてを怖がっていただけだ。
世界を拒絶していた時となんら変わりが無い。
「それで充分だよ。千里の道も一歩からってね」
「・・・・、どうしてそんなに優しいんですか? 先生は、災厄をもたらしにやってきたんでしょ?」
「その通り、私は災厄を皆に等しくもたらす。ここに居る全員に、今回は災厄だったろ? そしてそれを乗り越えた者達に、私は拍手喝采を送ることを惜しまない。私は観客なんだよ」
先生は僕を見下ろし、褐色の肌に映える白い歯を見せて破顔した。
騙されちゃいけないんだ、鵜呑みにしちゃいけないんだ、この人は、この人は、この存在は・・・・、っていくら自分に言い聞かせても、心が緩んで、綻んで、融けて涙になってこぼれ落ちていくのを止めることが出来なかった。
「ほら、戦友達のお出迎えだよ」
「おーう!! カスガぁ!! そんなところに居たのかよ!!」
錦君が愛おしいくらいに明るい顔で、大きく手を振ってやってきた。
溶けていく。融けていく。解けていく。
ホットミルクにチョコレートが溶けていくみたいに。
温暖化でシベリアの永久凍土が融けていくみたいに。
からまったイヤホンのコードが解けていくみたいに。
「カスガ、サンキューな、ホントに」
錦君の隣りに居た佐伯君が僕をギュッと抱きしめてくれた。
「え、それは・・・」
「あの時、体張ってオレを庇ってくれたもんな」
「あ・・・・、うん・・・」
「ニシキなんて捕まってワーキャー騒いでただけだもんな?」
「あっ、チカラ、テメー!! 離れろ!!今すぐカスガから離れろ!!」
僕は錦君と佐伯君の間で揉みくちゃにされながら、そのポジションをすごく心地よく感じていた。
ああ、僕は今、ここに居るんだ。
ふと気が付くと、少し離れた所で、瓜生君と龍樹先生が並んで何か話していた。
先生と生徒、というより旧知の仲って雰囲気で。
あれ、二人は昔からの知り合いだったのかな?
ん?
昔から?
あ、万木君は・・・・。
万木君は、いったいどうしているんだろう?
PR