「・・・、だから、そういうのって即物的な感じがしないか?」
携帯の向こうで錦が言った。
錦の口から『即物的』なんて言葉が出てきたことに驚いていると、なぁ瓜生ちゃんと聞いてる? と不満そうな声がした。
「そ、即物的、だろ? まぁイイんじゃね? 恋とか恋愛とか綺麗に言ってもどうやったって肉欲は絡んでくんだろ」
「うわぁ、『肉欲』だって。瓜生エロい」
「テメェ、ぶっ殺すぞ。そっちが先に言い出したことだろ」
「はいはい、瓜生はむっつり、ってダメ!! 電話切るな!!」
なんで分かった? 通話を切ろうとしたのを。気配が伝わった?
恐るべし携帯機能。もう気配まで伝えてしまうようになったのか。
「まぁ、恋愛対象を決める上で内面か外面か、好きだからやりたいのか、やりたいから好きなのか、みたいなさ、そういうのって不可分だと思うんだよな」
オレは話しながら椅子から立ち上がってベッドに寝転がった。
「あ、瓜生、今椅子から立ち上がってベッドに寝たろ?」
何で??!
やっぱ気配伝わるの?
ていうかおまえもうオレの部屋に潜んでるだろ?
どっかでオレのこと見てるだろ!?
焦ってベッドの下を覗き込んでみる。
「フフフ、ベッドの下なんか探しても無駄だぜ?」
助けて!!!
「おまえマジで怖いな!!ってちゃんと人の話を聞け!!」
「ごめんごめん、聞いてるよ」
たく何でオレが夜中の12時に錦の恋話なんて聞いてんだ?
「だからさ、やりたいって気持ちが先行してるからって、それは不順だなんて思わなくてもイイって話。むしろそれぐらいが普通、ていうかそれぐらいじゃないとダメなんじゃないのか?」
ま、錦の場合、かなり性欲が先行してそうだけど。
「うん、思春期だし」
うわ、『思春期』なんて恥ずかしい言葉使っちゃってる!!
フツー思春期真っ只中の人間は使わないだろ。
「健康優良不良少年だからな!! 俺たち」
「なんだそりゃ?」
「大好きな漫画のセリフ」
「あっそ」
「それに、やりたいやりたい言っても、いったい何がやりたいんだかよく分かんないし」
「ま、そんなもんだろうな。実際そういう状況になんなきゃ分かんないし、そういう状況になれば自然と分かるものかもな」
そんなこと言ってるオレ自身、なんも分かってないような気がする。だいたいオレ等はまだ15、6だぜ? 世の中の何を分かってるっていうんだ? 自分のことだってよく分かんないっていうのに。
「体は正直って言うし、その時になったら体が分かってるかも」
錦は携帯の向こうでニシシと笑った。
「何だソレ? 下ネタ?」
「そ。下半身のアンテナがビンビンに反応するかもね!!」
「体っていうより、本能の赴くままって感じだな、それは」
錦らしいな、それが。
頭であれこれ考えるよりも。
「やらないより、やり過ぎるくらいの方がイイ」
オレは自分に言い聞かせるみたいに呟いた。
「あ、イイ言葉かも。ソレ」
「オレの大好きなドラマのセリフ」
「ふうん、ケド、なんだかスッキリしたよ。瓜生と話せて。これで眠れそうだ」
「おっと、もうこんな時間か」
「明日も練習行く?」
「行くと思う」
「んじゃ、明日」
「ん。お休み」
オレは携帯を切った。
結構長電話しちまったな。
ていうか明日も会うんだし、部活で話してもよかったのでは?
なんて思ったけど、こういう話は夜に電話で、っていうのがオツなんじゃないのかな。
さしずめ人の習性?
ま、まだまだGWだし、たまにはイイか。
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