最初にアイツを見たとき、「あ、友達になりたいなぁ」って思った。
それが小学二年のときだった。なぜだかはわからないけど、ただ、素直に、惹かれた。
そして小学生の間中、一緒のクラスにはなれなかった。だから共通の友達を通してたまに話すことはあっても、面と向かってや二人きりで、なんてことはなかった。だけど、ずっと気になっていた。アイツと仲良くなりたい。
渡辺シンタロウ。
シンタロウはいつも笑っていたような気がする。ふわふわしたヒヨコみたいな短い髪に、えびす顔の細い目。だから笑顔にみえる。それを抜きにしても、笑顔が絶えない。ころころとよく笑った。
ずっと見ていた。廊下ですれ違ったり、シンタロウのクラスに遊びに行ったり、体育祭のとき、球技大会のとき、遠足のとき。何気なく話したり、じゃれあったりはしたけど、それじゃ物足りなかった。ぜんぜん足りなかった。オレだけに話しかけて欲しかった。オレだけに笑いかけて欲しかった。
そして、今、隣で、オレだけに向かって話し、笑っている。
まだ、夢みたいだ、なんて思うときもあるくらいだ。
「なぁ、金田ってさぁ」
「ん?」
「楽しいヤツだよね」
そう言って、シンタロウはエヘヘと笑った。どう?いいこと言ったでしょ?褒めて、って言ってるみたいに。
冬の夕方、並んで歩くオレたち。
「な、なんだよイキナリ・・・」
もう暗くなっててよかった。じゃなかったら顔を真っ赤にしてるのがバレて、こいつになに言われるかわからない。
「前から思ってたんだけどさぁ、俺たちがこうして話すようになったのって、中学に入って、同じクラスになってからだよね?」
「う、うん。そうだっけ?」
「しかも部活も同じ軟式テニス部」
「そしてダブルスでペア組んで」
「うん」シンタロウは大きく頷いた。「なんかこの一年で急に仲良くなったよね」
「あ、ああ」
そうなんだ。シンタロウはこういう照れるセリフを大真面目に言うヤツなんだ。そしてオレはドキドキさせられっぱなし。
「けどさぁ、変なんだよね」
「なにが?」
「なんだか、ずっと前から、金田とは友達だったような気がするんだ。ずっと前から、ものすごく仲良かったような気がするんだ。どう? 金田。そっちはそう思わない?」
そしてこんな照れることを大真面目に訊いてくるヤツでもある。
「う、うん。考えてみたら、そんな気がするかも・・・」
辺りはとっぷり日が暮れて、藍色の夜空には銀の星が輝いている。
隣にはシンタロウがいる。
これって結構幸せかも。
いや、かなり幸せかも。
「ねぇ、根岸んとこのクリスマス・パーティ、行く?」
クラスメートの根岸が、みんなでなんかワーっとやろうって、自分の家でパーティを企画していた。食べ物とか飲み物とか持ち寄って、プレゼント交換とかしたり。
「ああ、あれね。行く予定だけど、面倒そうでもあるよな」
ホントはシンタロウと一緒にクリスマスを楽しく過ごせるもんだから、絶対行きたいんだけど、ちょっとはぐらかしてみた。
「金田が行かないんなら、俺も行かない」
「え、そうなの?」
「そのかわりさ、ウチ来ない?」
「ウチってシンタロウんチ?」
「ほかにどのウチがあんだよ」
「だよね」
「昼間は誰もいねぇからさ」
おおお、なんだか急展開。大勢でワイワイっていうのもイイけど、シンタロウと二人きりっていうのも悪くないな。
「別にイイけど」
「じゃ、決まり! その日は十時にウチ来いよ!」
「あ、そうだ。なんか持ってく?」
「なんかって?」
シンタロウが不思議そうにオレの顔を覗き込む。
「え、あの、お菓子とか・・・」
ぷ、ぷ、プレゼント、とか・・・。
い、言えない。なんか恥ずかしくって言えない。これだったら大勢でプレゼント交換した方がよかったかな。でも、それじゃオレのをシンタロウに渡せないし、オレもシンタロウのがもらえるかどうかわからないもんな。
「う~ん、まぁ適当に持ってきてよ」
適当ですか。ハァ。
「それじゃ、楽しみにしてろよ!」
シンタロウはニィって、今までみたことないくらいにカワイく笑って、オレの肩を叩いた。