「陽介ちゃんのお友達なんだってね」
「はい、立花っていいます。大学で同じ学科なんすよ~」
「じゃあ、特別割引で♪」
「うわ、ありがとうございます!」
「また来てね。安くするわよ~。その代わり、他にもお友達いっぱい連れてきてね!」
「まかせて下さい。サークルの奴ら連れてきます! すごく美味しかったです。ご馳走様でした!」
「いいえぇ」
俺が厨房で皿洗いをやっていると、奥さんと立花のやりとりが聞こえてきた。奥さんも立花も、上手くやるよな~。
「陽介ちゃん! ほら、立花君帰るって! 仕事いいから、見送ってやったら?」
「あ、ハ~イ! 今行きます!」
俺は最後の食器を洗浄機に放り込んで、濡れた手をタオルで拭き、厨房から出て行った。
「どうだ? 美味かったろ? ま、俺が作ったんじゃないけどな」
「ああ、想像以上に美味かった! また来るよ」
ウソのない、子供みたいに満足した笑顔。ちょっとドキっとさせられる。立花って、むっちりとしたガタイに似合わず結構カワイイ童顔なんだよな。その微妙なアンバランスが、なんかイイなぁ、なんて思ったりもして。これから友達として付き合っていくのに、それはツライかもな~。どうしよう、惚れたりしちゃったら。
「おまえ、何時ごろあがり?」
立花は、チャリに跨りながら言った。
「ああ、あと一時間ってトコかな?」
「ふう~ん、じゃあ、部屋に戻った頃、じゃまするよ。今日のお礼に、缶ビール差し入れてやる」
「マジで? 別にいいのに」
「遠慮すんなって! じゃ、お疲れ!」
立花は元気に手を振って、チャリを走らせて行ってしまった。
う~ん、いいなぁ、友達って。
しみじみ思いながら、俺は店に戻った。
「陽介ちゃん、そろそろ上がっていいわよ」
奥さんが声をかけてくれた。
「あ、じゃあ、そうします」
「なんか飲んでったら?」
「いや、今日は、帰ります。いつもスミマセン」
「ああ、そうね。カワイイ立花君が待ってるんだもんね♪」
「・・・え?」
「な~んて♪ 早く彼女つくりなさいよ!」
「は、はぁ。。。」
オイオイオイ! ドキっとする冗談ヤメテくれよ~。もしかして俺の性癖バレた? なんて一瞬思っちゃったじゃんよ~。ああ、怖い怖い、オバサントーク。
エプロンをしまって、顔と手を洗って、外に出た。外は夜風が涼しくて、気持ちよかった。ちょっと涼んでから、さて、チャリに手を掛けると、誰かの気配を感じて振り返った。
「陽ちゃん、帰るんだ」
う、そこにはまだユニフォーム姿の櫂が立っていた。
「あ? ああ。ちょっと用事があってな」
自然と目が泳いでしまう。この前のコトがあってから、なんか意識しちゃうんだよな~、櫂のこと。
うつむいて顔を赤く染める櫂。密着して熱く蒸れる体。うぶげの生えた形のいい耳。興奮した吐息。
「さっきの人、誰?」
「え? 誰?」
「ここで喋ってた男」
げ、見てたのかよ。気付かなかった。もしかして、隠れてたのか?
「あれは、大学の友達」
「仲イイんだ」
「え? ああ、まぁ・・・って、オイ、櫂、もしかして、ヤキモチぃ?」
俺はからかい半分で櫂の坊主頭を笑いながら撫でた。
すると櫂は予想外に強い反応を示して、俺の手を払いのけ、じっと睨んできた。
「何言ってんだよ、バカ!」
そう言い残して、櫂は母屋の方へ走り去ってしまった。
俺はぽか~んとして取り残された。
なんだ? 櫂の奴。変なの。
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