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藤巻舎人 脳内ワールド

藤巻舎人の小説ワールドへようこそ! 18歳以下の人は見ないでネ

   

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題名の無い物語

  
   2 はるうらら


 岩熊太一と一緒に暮らし始めて十日が経った。そして次第に奴のことが分かってきた。
 とにかくなにも出来ない。
 料理が出来ないのは初日からわかった。だからそれ以外は分担しよう、などと言っていたクセに、まるで出来ない、いや、やろうとしないのだ。無理矢理やらせたら、遅いし、まごつくし、失敗するしで、見ている剣之介が先にキレてしまい、「もういい、おまえは何もやらんでいい!」と自分ですべて引き受けてしまった。実際、太一にやらせるより、自分でやった方が早いし正確だしキレイになるし、なにより本来他人任せにするのが嫌いだったので、必然的にそうなった。


 窓を開け放って、はたきをかけ、掃除機をかけた。ベランダの向こうには淡い春色の空がどこまでも広がっている。ふわりと窓から匂い立つ風が入ってきた。ここに来て十日、日に日に気温は上がり、一気に桜が咲き始めた。大気にも、どこか花の香りが混じっているような気がする。
 自分の部屋の掃除が終わった剣之助は、はたきと掃除機を持って、隣の太一の部屋の前に立った。
「お~い、太一、入りますよ~」
 今は外出していないのに、一応小声で断りの言葉を呟いてみた。
 ふすまを引く。敷きっぱなしの布団、脱ぎ散らかした衣服、読みかけのマンガ、雑誌、等々。
「ハァ~」
 剣之介は深い溜息をついた。
 あの野郎、洗濯物はちゃんと出しとけって言ってるのに。ホントに何も出来ない、何もやらない。野球以外は。


 はっきり言ってホント駄目な奴だが、どうやら岩熊太一は野球だけは上手いらしい。本人の口からしか聞いていないからよく知らないが、とりあえず高校にはスポーツ推薦で入るらしかった。
 剣之介はこれも初めて知ったのだが、二人がこれから入学する高校の野球部は、最近実力をつけ始め、この五年で二回甲子園に出場していた。新興勢力であり、今、県内で一番波に乗っている学校で、岩熊太一はそれでこの高校を選んだのだ。
 太一の実家は、ここから電車でも二時間近くかかり、更に駅からも離れているかなり遠方で、通うには難しい。しかしまだ高校の野球部には寮というものがなかったので、学校の近くに下宿して通うことになっていた。
 そこで出てきたのが剣之介だった。


 確かにこの何も出来なさ加減には、母親でなくても心配になるってものだ。剣之介は爪先立ちで太一の部屋を縦断しながら思った。いろんな物を踏まないようにやっと窓まで辿り着き、開け放つ。途端、甘い風が顔を撫でる。
 祖父の葬儀の時に、剣之介の父親は叔母の幹子から相談を受けていたのだ。息子の太一が春から離れた高校に通わなければならないが、独り暮らしをさせるのはかなり心配だと。丁度剣之介も父親に独り暮らしをしたい、と訴えていたので、そこで話しがかち合った。
 叔母の幹子は剣之介のことは小学生の頃しか知らなかったが、自分の兄に似て、賢くて頼りがいがあるという印象を持っていた。だから剣之介が一緒ならば、いくらか安心して息子を送り出せると思った。


 あんなバカを預けられてもな・・・。それでも多少なりに太一と遺伝子を共有していると思うと、腹が立った。なんであいつの世話をせにゃならんのだ。
 ハタキをかけながら、机の上の目覚まし時計に目をやる。
 あ、そろそろ太一がランニングから帰ってくる。昼飯作らなきゃ。そう思った瞬間、ハタと掃除の動きを止める。
 なんだこれは? 俺はあいつの母親か?嫁か?っつーの!!
 段々掃除がばかばかしくなってきたので、適当に済ませて昼の用意にとりかかった。

「ただあいま~、腹減った~!」
 太一が勢い良く玄関を開けて帰ってきた。
「ケンちゃん、今日の昼飯なぁに?」
 完全に太一のペースにはまってることにイラっとくる。そして図らずも乗ってしまう自分にもイラつくいた。
「見ればわかるだろ」
 素っ気なくテーブルの上を顎で指す。
「おお! さすが凝り性のケンちゃん、昼から無駄に豪勢だな!」
「おまえさぁ、食べなくていいゾ・・・って」
 剣之介の視線が、土埃で汚れた太一のジャージと靴下に止まる。
「な、、、なんでランニングでそんなに汚してくんの? おまえどんだけスゴイとこ走ってきたんだよ! えぇ?」
「あぁ、いやぁ、公園でオッサンたちが草野球してだがらぁ、ちょっとまざってきた」
 太一は頭の後ろを掻き、照れながらテーブルについた。
「なんで照れる! その前に手ぇ洗え!」
「たく、うるせぇなぁ。母ちゃんみたいなこと言うなよ」
「う、うるせぇなぁ?? お、おまえ、誰が洗濯すると思って・・・、はぁぁ~」
 余りにも頭にきて、酸欠状態になり、剣之介は目眩がして、椅子にグッタリと座り込んだ。
 ななな何なんだ?コイツは? 剣之介にはもはや理解不能だった。こんなに他人に振り回されるのは、初めてだった。


 なんとか落ち着いたところで、やっと昼飯を食べ始めた。剣之介は無言でサラダを見つめシャリシャリと食べ、太一はダイニングに据えられたテレビでお昼の番組を観て笑いながらチャーハンを食べ、玉子スープを啜った。
 クソ、このテレビだって俺のだったのに、と剣之介は心で呟く。
 太一の部屋にはテレビが無かった。だから太一は、剣之介のテレビをダイニングに置いて、共同で使おうと提案してきた。当然の如く剣之介は拒否したが、いつもの笑顔のごり押しにとうとう折れてしまった。まぁ、パソコンでも観れるし、だからゆずったんだぞ? 決して俺が負けた訳じゃないんだぞ?

「あぁ、そうだ、太一ぃ」
 剣之介はどんよりとした声で言った。
「んん? なに?」
 テレビから目を離さず太一。
「おまえ、学校始まったら、言うなよ?」
「へ? 何を?」
「これ」
「は?」
 太一の鈍さにはイライラさせられる。
「だから、一緒に住んでること」
「はぁ? なんで?」
 細い目を更に細めて、首を傾げる太一。
「なんでもだ! 絶対言うな! 誰にも!」
「ちぇ、自慢になると思ったのに」
「何の自慢になるんだよ!」


「オラ、いつまでテレビ観てんだ? さっさとジャージ脱げ!」
「え!? ケンちゃん、昼間っからやらしぃ♪」
「テメエ、殺すぞ」
 剣之介は背後から太一の首を絞めた。
「フグッ、わがったがら、優しくして」
「洗濯すんだよ! 早く脱げ! そして部屋に散らばってるのも洗濯機に入れろ!」
 太一はやっと動き出し、ぶつくさ言いながらジャージとアンダーシャツと靴下を脱ぎ、部屋に入っていった。
 剣之介は呼吸を落ち着かせ、太一の首に回した掌を見つめる。
 随分太い首だ。それにアイツの体、かなり鍛えられているらしい肉付き。ふぅん、野球が上手いっていうのも、あながち大袈裟でもないらしい。
「ほら、早くしろ!」剣之介は太一の部屋に向かって叫ぶ。「干すのも自分でやれよ!」
 部屋からは、太一の不平が聞こえてきた。
 ハァ、頭痛ぇ。
 剣之介はダイニングの椅子に座って頭を抱える。
 この先俺はやっていけるのか? すさまじく不安だ。

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バッテリー関連

のサイトさんて、結構いっぱいあるんすな~。

ヒマだから探してみたら、あるある♪

そしてカワイイ、そしてエロい!!

女の子の頭の中って、みんなあんななのかな~?

キュン殺でつ。

みなさん、巧をカワイク描いていらして、
案外巧もイイもんだな~と(アホです

題名の無い物語

     1 動き出した時間 



 ベランダに出てみると、鉛色の空の下、街が一望できた。案外高台にあるらしい、と古谷剣之介は冷たい空気で肺を満たしながら思った。
 東北の地方都市、政令都市には届かないが、それに近い規模の街。連なる住宅と、遠くには駅前のビル群が望めた。どれも空と同じ、くすんだ灰色に見える。
 高台は同じでも、他は横浜と違う。海もないし、3月なのにまだ寒い。それになんだか重苦しい。この空のせいだろうか、それもあるだろうが、多分、気持ちの問題だ。
 新しい土地、新しい生活、新しい学校・・・。
 不安というより、面倒臭い。
 チラリと隣の窓を見やる。剣之助はハァと溜息をつき、部屋に引き返した。


 2DKのアパート。フローリングの部屋を取った。
 隣の和室は、岩熊太一が入った。最初はちょっと不満げな顔をしたが、強く押したら案外素直に応じた。身を引いた、というよりどちらでもよかった、といった感じだった。エビス顔のヘラヘラした雰囲気の割りに、我は強いのかもしれない。
 メンドくない奴ならいいのだが。


 岩熊太一、従兄弟で、父親の妹の息子。小学校低学年の頃まで、何度か遊んだことがあったが、それ以降会うことも無く、一緒に住むと決まるまで、まったく忘れていた存在だった。
 同い歳で、4月から、同じ高校の一年として通うことになっていた。
 ホントにこれでよかったのだろうか、剣之助はベッドに腰掛け、肘を膝に付いて顎を載せた。どうにか片付いた六畳の部屋を見渡す。高校生にししては小ざっぱりとし過ぎたともいえる空間。ベッドに机にパソコン・ラック、本棚、コンポ、そして未だ開かれていないダンボールが二つ、部屋の隅にあるだけだった。
 横浜の祖父の家にいた時使っていた部屋よりも狭いが、基本的に物が無いから、余り関係なかった。
 じいちゃん・・・、声にならない声で無意識に呟く。もうこの世に居ないと思うと、奇妙な感じがする。まだ自分の中には居るのに、この世界のどこを探してもいないなんて、納得がいかなかった。悲しみより、その不思議さが許せなかった。世界ってなんだ? 死ぬってなんだ?


 隣でまだ引越しの荷物を片付けている岩熊の気配がする。やっぱり一人で住む方がよかった。しかしそれは許されなかった。今ではたった一人の家族である父親の意向だ。こんな時、生活力の無い子供である自分に腹が立つ。今まで散々ほったらかしにしてたくせに、いきなり保護者ヅラだ。
 あんな父親についてアメリカに行くなんてまっぴらだった。だから今まで祖父の家にいたんだ。それがいきなり死んでしまって・・・。父親と一緒に住むのは嫌だった。まして今は知らない女と結婚までして、むしろ俺の存在なんて邪魔なはずだ。だからといって、横浜の祖父の家に一人で住む気にもなれなかった。あそこに独りでいたら、やがて悲しみと寂しさに押し潰されてしまいそうな気がしたから。そしてそんな弱い自分に我慢出来なそうだったから。
 怖かったのだ。そんなコントロールできない、弱い自分と面と向かうのが・・・。


『トントン』
 不意にドアがノックされる。
 そして返事も待たずに引き戸が開いた。
「ケンちゃん、なぁなぁ片付いた?」上下のスウェット姿の太一がずかずかと部屋に入ってくる。「うわぁ、すっげぇ片付いてるなぁ。あ、パソコンあんだ! できんの?」
 まるで兄弟に対してのような無遠慮な振る舞い。剣之助には信じられなかった。いくら従兄弟といっても、小さい頃、数回遊んだだけで、こっちは殆ど忘れていたのに、そんなの全部はしょって、一気に距離を詰めてくる。息苦しいほどに、腹立たしいほどに。
 これはある種の才能なのか? 単なるバカなのか?
 だいたいガキじゃねぇんだから、『ちゃん』付けで呼ぶなよ。コイツはあの頃のまんまなのか?
「本とかもいっぱいあんな~。ケンちゃん勉強できそう」
 太一はポケットに手を突っ込み、きょろきょろしながら部屋をぶらつく。
「あのさぁ、その『ケンちゃん』っていうの、やめてくれえる?」
「へ? なんで?」
 イラっとくる。膝の上で握られた拳が汗ばむ。
 この無頓着さが。
「なんでも」
 一瞬言葉に詰まったように、太一は黙り込む。戸惑ってるようにも、納得しているようにも、不服そうにも見える無表情で。
「ふ~ん、わかった」
 そう言ってクルリと体を反転させ、ドアに向かった。
「あ、そうだ」部屋を出るついでに、振り向きざま、太一は人懐っこそう笑顔で言った。「あとでオレの部屋も見に来てよ」
 ドアがすーっと閉まる。
 なんで俺があいつの部屋を見に行かなきゃならないんだ?
 剣之助は溜息をついて、ベッドに勢い良く倒れ込んだ。
 ただ一緒に住むだけで、別にお互いかかわり合ったりしなくてもいいのに。
 メンドクサイ。


 祖父の葬儀の時、久しぶりに父親に会った。これからどうするんだ、と問われた。だから、あんたに付いて行くのではなく、横浜に残るのでもなく、日本で、独りで暮らしたい。ここではない、どこかで、と訴えた。
 剣之助は人に庇護されるのは大嫌いだが、必要とあらばなんでも躊躇せずにとことん利用する性格だった。
 独り暮らしをするには金が要る。父親に頼るのは嫌だけど、この人は俺を助ける義務がある。貰えるものは貰っとく。
 そこで条件が出された。父親の妹、幹子叔母さんの息子が、春から独り暮らしをする予定で、しかし叔母さんはそれが心配で仕方ないらしい。そこで剣之助が一緒に住んでくれれば、少しは安心出来るという。
 メンドそうな話しだったが、その他に良い手もなく、剣之助は渋々承諾した。


いつの間にか部屋が薄暗くなっていた。少しうたた寝していたらしい。結構疲れていたのかもしれない。それはそうか、早朝からの引越し、荷解き、片付け・・・。朝はまだ横浜にいた。夕方には福島の見知らぬ街、初めての部屋、忘れていた従兄弟の同居人。一日が、一週間くらいに感じられた。
 剣之助はベッドから起きだし、財布を持ち、コートを羽織り、アパートを出た。腹が減ってるんだ。だから心細くなる。
 自転車にまたがり、真っ先にチェックしておいた、近所の大型スーパーへ向かった。もっと近くにコンビニがあったが、剣之助はコンビニ弁当や出来合いの物が好きではなかった。


 買い物を済ませてアパートに帰ると、ダイニングのテーブルについて、太一が剣之助を待っていた。
「お帰り! 晩飯なに?」
「はぁ?」
「晩飯のメニューだよ」とさも当然の如く訊いてくる。「買い物行ってきたんだろ?」
「そうだけど、おまえの分はないよ?」
「ええ? なんで??」
 なんでと言われ、困惑した。祖父と住んでいた五年間、食事はほとんどそれぞれが自分の分だけを作って食べていた。掃除や洗濯は自然に分担してやっていた。一緒に住んでいても、お互いもたれ合うことなく、干渉は最小限で、それでも楽しくやっていた。だからここでも、当然食事は自分で作るものと思い込んでいた。
「オレ、料理出来ないよ。ケンちゃ~ん、どうしよう?」
「知らないよ。弁当でも食えば?」
 剣之助はテーブルにドサっと買い物袋を置いた。
「ケンちゃんさぁ~。意地悪言うなよ~」太一は椅子から立ち上がり、剣之助の背後に回って抱きついてくる。「仲良くしようぜぇ~」
「バカ、意地悪とかそういう問題じゃないだろ」剣之助よりでかい体、力強い腕、身動きが取れない。「いいから放せ!」
「他の事はオレ、やるからさぁ、分担し合おうぜぇ、な? いいばい? ソレ」
「わかったから、離れろ!」
「ホント? 嘘だったらはなさねぇよ?」
 ああ、なんとなく思い出した。こいつは昔もこんなふうにやたらひっついてくる奴だった。そして今と変わらない丸顔で、人を食ったようにヘラヘラ笑うんだ。黙っていても食事が出てくることを、いつでも母親がいることを、父親がいることを、当然と思って笑うんだ。
 そこまで考えて、剣之助は心の中でふぅと一息つく。そんな無頓着さなんて日常茶飯事だった。いつでも周りはそうだった。いちいち気にしてたら、キリが無い。どうでもいいんだ、そんなこと。


 引越ししたてだったので調味料なども限られていたから、夕飯は簡単なものにした。春キャベツとアンチョビのパスタ。キャベツを洗っているときに、一口生のままかじってみた。瑞々しくて甘かった。ちゃんと地元産の野菜コーナーで買ったのだ。
 ああいったスーパーは、現地にちゃんと新鮮で美味しい食材があるのに、何故か遠い他県から取り寄せた物を大々的に売りたがる。まったく非効率的だし、バカげてる。
「むほ♪ すげぇうめぇーなコレ!」
 太一は目の前で二皿目を平らげようとしていた。
 まったくこいつは・・・。剣之助は辟易しながら、デイリー・ワインとして買ってきた白ワインのグラスを傾けた。そのせいで、ずっと張り詰めていた意識が少し緩む。
「あれ、ナニ?それ。ナニ飲んでんの?」
 太一が細い目を瞠って訊いてきた。
「あ? ワインだけど?」
「ちょ、ワイン? なんでそんなの飲んでんの?」
 なんでって・・・。祖父はワインが凄く好きだった。だから食事の時など、自然と飲む習慣がついていた。
「なぁ、ちょっと飲まして」
「ん? ああ、イイけど」
 普段はそんなことしないのに、自分のグラスを太一に渡した。自分で思っている以上に気が緩んでいた。見知らぬ土地、見知らぬ部屋、見知らぬ他人、そんなものに囲まれて、なんだか非現実的な、夢心地だった。
 ゴクっと一口飲んでから、太一が叫んだ。
「おえぇぇぇ!! なんだコレ、酒だべ!」
「だからワインだって言ったろ?」
「うわ、水、水、水!」
 太一は席を立ち、慌てて水道に駆け寄った。
 空いたグラス、食べかけのパスタ、ズレた椅子。剣之助は肘をついて、目の前の席をぼんやりと眺める。
 ハハハ、じんちゃん、いったい何なんだろうだろうね。ここは騒々しいよ、すごくうるさい。感傷に浸ってるヒマさえないよ。
 ついこの間まで、目の前には祖父が座っていた。そして静かに食事をし、ワインを飲む。
 それはそれはとても静かな生活で、お互いなにも喋らなくても、大抵のことは通じ合えた。時間はゆったりと流れ、変化といえば、季節のうつろいでしか感じられなかった。ほとんど静止した空間。老人の時間であり、ある意味、死んだ空間だった。剣之助はその時空に、魅入っていた、取り込まれていた、そしてそこに逃げ込んでいた、甘えていたのだ。

「アレ? なんか体が熱いゾ? 頭もぼんやりするし」
 席に戻った太一が、顔を真っ赤にして言った。
「クス、おまえ結構お子様だな。あんなんで酔っ払ってやんの」
 思いも寄らない軽口が、剣之助の口からこぼれ落ちる。
「バカいうなって、未成年だぞ!」
「ガキだな、ガキ」
「な・・・、おめぇだってガキだべって!」
「くぅ、ハハハハァァ!」
 なんだか可笑しかった。腹の底から笑がこみ上げて来る。こんなに可笑しいのは、笑ったのは、なんだか久々のような気がした。


 止まっていた時間が、ようやく動き出した。

  

バッテリー

遅ればせながら、今頃「バッテリー」を読みました。
なんとなく、耳には入ってたけど、ほとんど内容も知らずにいました。

しかし、先週本屋で平積みになっている文庫本をみつけ、
手にとってチラ見。
映画化するのか~。
おお、キャッチャーの子カワイイ♪
なんて不純な動機で買ってみる、Ⅰ。
おおお、面白れぇぇぇ~!!
ていうかモエる!!!

小説自体も凄く面白いのに、
それプラス・モエ要素が加わるとは・・・。
あの作者はもはや確信犯なのでは??と疑いたくなる。

ということで、一日一冊読破のペースで読みました。
やっぱ僕は巧姫より豪王子だな~。
あ、吉も捨てがたい♪

そして「バッテリー」に影響されまくりの小説を執筆中w
エロ無しですが、まぁ、趣味程度に。
がむばるゾ!

真夏日(4)


「オウ♪ 涼しい~」
 ラーメン屋に入った俺は感嘆の声をあげた。
「ちは~」
 暖簾をくぐって、瀬川が言った。
「いらっしゃ~い!」
 カウンターの中でオヤジさんが湯を切りながら大きな声を出した。
 

 L字のカウンターに二人掛けのテーブルが二つという狭い店ながら、結構繁盛している学校の近くのラーメン屋。ウチの学生は勿論、リーマンやらどっかのオッサンやらオバサンやら家族連れやら、客層は様々。
 俺ら二人は、その中でも通ってる方で、あんまり客がいない時なんか、オヤジさんがサービスしてくれたりする。
 内からの熱気を浴びながら、カウンターの端に座る。中華鍋から、バッと火柱が上がる。俺たちは、見慣れていながらも、おぉ~と軽く歓声をあげる。汗に濡れたオヤジさんの横顔も、どこか得意げだ。


「オレ、冷やし中華」と瀬川。
「えーと、じゃぁ、俺は・・・」と壁の貼り紙が目に入る。「おお? オッチャン、なに? つけ麺なんて始めたん?」
「ああ、なんか洒落てるだろ?」
 え~、そんなもんか? まぁイイや。
「じゃぁ、試しにソレ」
「あいよ!」


 瀬川が水差しからお冷を注いでくれた。
「どんも♪」
 俺はそれを一気に飲み干す。
「冷てぇ~! もう一杯!」
「自分で注げ」と瀬川。
「なっ! おまえってホント、ケチだな~」
 俺は水差しを取って、コップに水を注いだ。
「自分のことは自分でやる」
「ていうかメンド臭がり?」と言って俺はまたお冷を飲む。
 瀬川は三人兄弟の長男、だからしっかり者?
「うるせぇ」
 瀬川は水を飲んでる最中の俺の脇腹を強く突いてきた。
「オゥブハァ!!」
 俺は突然の攻撃に身をよじり、水を吹き出しそうになった。
「ゴォラ! ゼガワ、ごほっ、げふぉ、変なトコに水入ったろ!」
 咳き込む俺を見て、肘を付いたまま、楽しげに笑う瀬川。
「ハハハハ、浅見ってやっぱおもしれぇ」


 俺だって瀬川といて、楽しい。
 だけど、おまえの楽しいと、俺の楽しいは、ちょっと、いや、かなり違うんだ。だから、おまえといると時々怖くなる。いったいどこまで仲良くすればイイのか、どこまで仲良く出来るのか、分からなくなる。
 どこかで一線を越えてしまうんじゃないかって。
 瀬川は大切な友達だ。失いたくない。


 それぞれ冷やし中華とつけ麺を啜った。つけ麺は、案外イケた。
「オッチャン、これ、ウマイよ!」
「だろ? おまけにチャーシュー付けたる!」
「おお!! すっげ~! やったやった!」
「浅見ぃ、喜び過ぎ」
 隣で瀬川が呆れた顔をして言った。そしてチャーシューに箸を伸ばしてくる。
「ちょっと待った! これは俺がもらったんだゾ? 瀬川にはやらん!」
 俺は一人っ子。だから俺のものは俺のもの。
「ああ?」
「これ、アサミちゃん、二人で食え!」
 オヤジさんが口を尖らせて言った。
「そうそうアサミちゃん♪ 仲良く食おうぜ♪」
「うるせぇ!」
 俺は小さく呟きながら、肘で瀬川の腕を突いた。
 俺はそういう呼ばれ方が嫌いだ。それを知っててオヤジさんも、瀬川も・・・、あぁ腹立つ。

「浅見さぁ」
「なんだよ」
「おまえ、プール入ってから、なんかハイだよなぁ」
「そ、そうか?」
「なんかあった?」
 瀬川は時々ギクっとするような鋭い時がある。俺が男が好きだって、バレてないよなぁ?
「プール入って、さっぱりしたからな」
「ふ~ん、一本ヌイてきたからな」
「ブゥフォ!!」
 思わず麺を吹き出した。
「な、なんで? おまえまさか見てたのか?」
「アホ、見るか。ハッタリだよ、カマかけてみたんだよ」
「なぁ・・・・」
 は、ハメラレタ。何も言葉が出てこない。みるみる顔が熱くなる。そんな俺のアホ面を、瀬川はニヤニヤしながら見ている。
「おまえ、もしかしてエビ先輩に見つかってねぇだろうなぁ?」
「な、なわけねぇだろ!」
 ホントはギリギリ危なかったんだけどな。
「ふ~ん。まぁそういうことにしとくか」
「なんだよ、信じてないのかよ!」
「いや、別に。それより、鼻からラーメン出てんゾ?」
「なっ!!」
 俺は慌てて鼻の穴に指をやる。
「な~んてウソ♪」瀬川は笑って言った。「おまえ、マジ最高だよな。ホント飽きないもん」
 はぁぁ~、瀬川にはかなわねぇ~。俺はベタつくカウンターにへたり込む。
 くっそぉ~、家帰ったら、糸目先輩でもう一回オナニーしてやる!

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プロフィール

HN:
藤巻舎人
性別:
男性
趣味:
読書 ドラム 映画
自己紹介:
藤巻舎人(フジマキ トネリ)です。
ゲイです。
なので、小説の内容もおのずとそれ系の方向へ。
肌に合わない方はご遠慮下さい。一応18禁だす。

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