栗原田の年越し
「オイ! 原田ぁ、おまえの好きな選手が出てきたゾ! 早くこっち来いよ」
「今そば茹でてんだよ! うるさいなぁ」
年越しはそばだろ! そば食いたい! なんて言い出したのは誰だよ~。あぁ~試合始まっちゃったよ~。
僕は慌てて茹で上がったそばをザルに空け、湯を切って器に盛った。そこに熱々のツユをぶっかける。
「クリ、かき揚げ載せる?」
「うん」
「ネギは?」
「あん」
う、なんかもうTVに夢中だし。「よし、イケ!」とか、「今だ、ヤレ!」とかTVに向かって叫んでるし。
昨日、いきなり電話で「原田ぁ、おまえ年越し実家に帰んねぇの?」と訊いてきた。帰らないと答えたら、大晦日の夜に押しかけてきた。なんで? クリは実家に住んでんだろ? ていうか彼女は? どうしてわざわざウチなんだ?
まぁ、イイケド。それはそれで・・・。
「はい、そば」
コタツの上に器を置く。
「おお、ウマソー! いただきマス!」そう言ってクリはそばをすすりだした。「原田、上手いなぁ、料理」
「別に茹でただけだよ」
「おまえさぁ、そういう時は『アリガトウ、ウレシイ』とか言って照れてればイイんだよ。かわいくねぇなぁ」
「・・・・」
まただ。いつものパターン。結局クリのペースにハマって、僕の方が折れて、主導権握られて、いい様に扱われて。
まったく腹立たしいけど、何も言い返せず、それを許してしまう僕も悪い。はぁ、なんでこんなになっちゃったんだ?
「おまえ、どっちの選手が好みなんだ?」
格闘技の試合をみながら、クリは訊いてきた。
「え、それは」
そんなことクリの前で言えないよ! なんでノンケのクリに男の趣味なんて言わなきゃならないんだ? 恥ずかし過ぎる!
「右の方だろ、今蹴り入れた奴」
「なんでだよ?」
図星なんですけど、一応はぐらかしてみる。
「あん? だって俺に似てるから」
「・・・・」
僕は顔を真っ赤にする。熱いのは、暑いのは、きっとそばのせいだ。コタツのせいだ。
ああ、来年もこうして振り回されるのかぁ。良いのか悪いのか。まぁ好きだから仕方ないんだけど。
こんな感じで、大晦日の夜は深まっていく。今年も終わろうとしている。
こんな感じで、僕たちの仲も深まっていく。新しい年が始まろうとしている。
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さあ、久々のアップは、クリと原田のコンビでした。しかもエロ無し。
まぁ、この後年越しで除夜の鐘突きまくりだったと思うのですがww
ということで、今年もありがとうございました!
そして2007年もよろしくお願いします!
藤巻舎人 12.30.2006
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