「狙われた秘密特訓」 1
「九十八、九十九、・・・百っと」俺はその声と同時に金属バットを手放し、地面にへたり込んだ。「はああ、やっと終わった」
辺りはもう真っ暗、誰もいない校庭の片隅で、自分の荒い息だけが聞こえる。
野球部の練習が終わってから、一人居残って走りこみや素振りの練習をするようになって一週間。さすがにキツイけど、なんの計画性もないただの根性論だけど、なにもやらないよりは、やり過ぎる方がマシだ。
中学の時は四番でエースはってたということで、意気揚々と野球部に入部した。しかし高校はそんなに甘いところじゃなかった。県内でも古豪として有名で、何度か甲子園にも出場している学校だけに、元四番でエースなんてごろごろいたし、なによりも先輩たちとのレベルの差が歴然だった。技術も当然のことながら、特に肉体的な面で大きな開きがあった。これがちょっと前まで中学生だった人間と高校生の違いなのか?
先輩たちが、なんだかとんでもなく大人に見えた。成長期ってのはすごい。だけど俺だって同じ成長期。やればやっただけ実になるはず。それにレギュラー争いはもう始まってるんだ。とりあえずこの差だけでも真っ先に縮めておかなきゃならないって訳で、俺は秘密特訓(大げさだけど)を決意したんだ。
「ふう、暑い。それに汗だく」
俺はしばらく地面に大の字になって寝転んでいた。夜空には星が瞬いている。風は春から初夏の匂いに変わろうとしている。それでも汗をかいた体には冷たい。
「さて、シャワーでも浴びて帰るか」
サポーターの中までべったりだ。
無人の脱衣所はなんだか落ち着かない。蛍光灯のかすかな音まで聞こえてきそうだ。俺はさっさと土や汗で汚れたユニフォームやら下着やらをカゴの中に放り込んだ。『ロッカー』じゃなくて『カゴ』ってところが温泉みたいで好きだ。まあ、古い学校だし、今どき男子校だし、気にする奴もいないんだろうな。
シャワー室も呆気に取られるほど簡素な造りだ。ただタイル張りの壁にシャワー口と水・お湯のバルブがズラリと並んでいるだけ。仕切りなんてあったもんじゃない。普段は部活が終わった連中が順番なんてなんのその、裸でごった返し、争うようにシャワーを浴びてる。野球部はもちろん、サッカー部、ラグビー部、陸上部、その他いろいろ、チンポ丸出しも関係なく、和気あいあい、まあ先輩後輩は多少あるけど、この時ばかりはみんなふざけ合ってじゃれ合って、もう大騒ぎだ。
それに比べて今は俺一人。だだっ広くて薄ら寒いし、ぶらぶらしたタマの辺りがすうすうする。
「今頃、あいつ家に帰ってんのかな」
俺はボソリと呟きながら、お湯と水のバルブをひねった。
坊主頭が少し伸びたような短髪。背は俺よりやや低くて、テニス部だけに細身だけどしっかりと筋肉はついている様子。そしてなによりもカワイイ顔。ちょと困っているようにも見える眉毛に一重の目、柔らかそうな唇。ああ、あいつの裸が見てみたい。めちゃくちゃカワイ過ぎる。ギュッと抱きしめて、唇奪って、それから、それから・・・、わかんねー!
「あっ、ヤベ、勃ってきた」
熱いシャワーに打たれる俺のチンポはムクムクと角度を上げ、すっかり真っ赤な亀頭をあらわにして脈打ち始めた。
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