県立男子高校の日常
【草間ケイスケ】(2)
ここは、美術室に隣接する美術準備室。細長い十畳ほどの部屋に、キャンバスや石膏像や椅子や粘土や針金や画材などが所狭しと放置され、古びた木製の棚には絵の具や薬品や画集なんかが納められている。
木の床は絵の具や傷で汚れ、部屋中に油の臭いが充満している。
普段から人の出入りは少なく、あるとすれば放課後の美術部の部員たちが使うぐらい。
今は午前中の授業時間。しかも隣の美術室では授業はないので無人だし、ここは校舎の隅なので人気は無い。
そんな狭苦しい美術準備室の真ん中に、一っ脚の椅子が置かれ、そこに腕を背後に回し、ロープで縛られ、真っ白なシャツはボタンを全部外され、良く筋肉のついた胸がはだけ、制服のズボンは前のファスナーだけが開かれ、そこから隆々とそそり立つチンポをさらしている男が座っていた。いや、座らされていた。
そのチンポの先からはいまだ先走りが溢れ、びくんびくんと脈打ちながら垂れ流している。
くそ、綿貫の奴、散々俺のこと弄びやがって、挙句の果てにどこ行きやがったんだ? 草間ケイスケは頭をがっくりと落としながら内心悪態をついた。
もしかしてこれが噂の放置プレイってやつか? しかもこんな状況なのにチンポびんびんだし。俺ってやっぱりMだったのか?
休み時間に、「体ちょっとかせ」と言われ、美術準備室の前で待ち合わせをした。授業が始まって少したった頃、綿貫が現れた。そして慣れた感じで準備室の鍵をポケットから取り出し、ドアを開けた。
「なんで鍵もってんだよ?」
「ん?」と面倒臭そうに綿貫。「それなりのコネがあんだよ」
促されて入った準備室は、むせ返るような油の臭いでいっぱいだった。ケイスケは思わず咳払いをした。ここでも綿貫は平気な様子。もしかしてよくここを使ってるのか?
綿貫はガラクタの中にあった古ぼけた椅子を持ち出し、辛うじて空いている部屋の中心辺りに置いた。
「まあ、座れよ、ケイスケ」
「あ? ああ」
少し不安げにケイスケは勧められるまま埃っぽい椅子を手で払い、腰掛ける。訳がわからないが、何故か心臓が高鳴る。
「なあ、ケイスケ」綿貫はいろんな物が散乱する木製のテーブルの上にあった麻縄を手に取りながら言った。「前から思ってたんだけど、おまえってさぁ、ちょっと、つうかかなりMっ気あんだろ?」
「あ? なんだよそれ」しかし無意識に声が震える。「なわけねぇよ」舌が乾いて上手く発音出来ない。
「そうか? コーチも言ってたけどさぁ」綿貫は手に持ったロープを見せびらかすように弄ぶ。「このロープ、何に使うか気にならないか?」
「き、気になるわけねーじゃん」
ケイスケは強がってみたものの、不安の裏側に期待が隠れているのに気付いて驚いていた。そして正直な体は即反応し、握った拳には汗が滲み、こめかみの血管はぴくぴくと動き、チンポは音も無く鎌首をもたげ始めていた。
綿貫はケイスケの分かりやすい反応を見て楽しみながら、興奮を必死で抑える。こ、これから大好きなケイスケを縛ってやる。オレの気持ちを知りながら、シンジのことばっかり見やがって。おまえが悪いんだぞ? だけどケイスケも楽しんで、オレも楽しめるんだから、別にやましいことはないのか? まぁ、あるとすればこの後に待ってるイベントか。
まぁ、それは仕方が無い。その時までは存分に楽しませてもらうぜ!
「じゃあ、いっちょ試してみるか?」
綿貫はその体格からはちょっと想像できない素早さでケイスケの背後に回ると、腕を取ってロープで固定し始めた。
「わ、バカ! マジかよ?」
「今さら何言ってんだ。興奮してるクセに」
確かにケイスケは欲情していた。ある意味期待していた通りの展開に、興奮を隠せないでいた。お、俺、ホントにロープで縛られてる。いったいどんなことされるんだ?
<つづく>
PR