俺は棚機錦(タナバタニシキ)。
別にいきなり語り出したからといって、このお話の主人公ではない。
俺は俺の主人公であり、他の話の主人公ではありえない。
言い方を変えると、みんなそれぞれが、それぞれの人生の主人公なのだ。なんだか正論でかっこよくて耳に心地よく聞こえるけど、ふたをあけてみれば、それは無慈悲で過酷で誰にも責任は押し付けられないってことだと思う。
常に自分を奮い立たせ、友情・努力・勝利をこの手にしなくてはならない。っていうのは大袈裟、冗談だけど、前半はは合っているはずだ。
そう、俺たちはそれぞれがそれぞれの主人公だ。もし今、自分がかっこ悪いと感じたら、かっこよくあるために、たゆまぬ努力を積み重ねていかなきゃならないんだ。
汗かいて、血ぃ流して、恥かいて、何かを捨てたり、何かを犠牲にしたり、傷付いて、傷付けて、這いつくばって、諦めて、憎んで、嫉妬して、蔑んで、挫折して、絶望して、叫んで、泣いて立ち上がって、ひたすら求めて、恋い焦がれて、それでもかっこよくて。
どんなに駄目でも、惨めでも、かっこ悪くても、自分が自分の人生の中心であれと、一瞬一瞬を、毎瞬毎瞬を、選択する。
自分で選ぶ。自分の責任で。誰の所為にもしない。誰の所為にも出来ない。後悔してもいい。それもいい。迷ってもいい。立ち止まってもいい。座り込んでもいい。
それが自分の選んだ道だったら。
随分えらそうなこといったけど、俺は学園生活で学んだんだ。
否応無しに、言い訳無しに。
それぞれのかっこよさは違うと思う。それぞれの主人公のあり方は違うともう。人の数だけ主人公がいて、人の数だけ物語がある。
そして、それぞれに共通する大切な舞台の一つが、私立日高見学園なんだ。
イッツ ショータイム!!
私立日高見学園は、それ程大きくもないけどそれ程小さくもない、いち地方都市の一郭にある。最寄の駅からは自転車で二十分。バスでも二十分。日高見丘陵地帯の東端に位置して、校舎はかなり高台にあり、裏には丘というより山が控えている。生徒の間じゃ、裏山で通ってる。
中高一貫だけど、中学校舎はまた離れたところにあるらしい。俺は高校からの編入組みなんであまり詳しくない。理由はわからないけど、高校から入ってくる奴らは結構多くて、全体の半分以上らしい。ま、エスカレーター式じゃないからかもしれない。いまどき珍しい男子校だからかもしれない。
だけどこのご時世、男子校は人気なんだけどね。いろんな法律の改正があってさ。
校風は文武両道、自由と博愛。これは普通って感じ。ガチガチの進学校でもないけど、偏差値はまぁまぁ高目。クラブ活動はかなり活発。
ま、こんな感じ。
そして俺の、俺たちの物語は、GW(ゴールデン ウィーク)から始まる。
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