なんだかんだで昼休み。
学食で昼飯を食うことになった。
しかも四人で。
なんで?
いったい何があった?
俺は唐揚げコロッケカレー。
瓜生は天ぷら蕎麦大盛りとおいなりさん。
カスガマロとかいう奴は、ミックスサンドウィッチ。
そして万木とかいうバカは、
豚角煮丼と天ぷらうどんとギョーザ定食。
いや、あえて突っ込まない。
むしろ当然なのか?
あんなクソ力出すんだから。それぐらいエネルギー摂取しないとやってけないのかも。
ていうか、もう既に普通じゃない。常軌を逸している。
ああ、やっぱり穏やかに物申してしまった。
心の中で。
それよりも、なんでこの四人?
長方形のテーブルに、俺と瓜生が隣り合い、
俺の向かいにカスガマロ、瓜生の向かいにヨロキが座った。
それぞれ黙って食べることに集中している。
いやしかし、ここで先に食べ終わってしまっては、待っているのは地獄だ。しかも生き地獄。
食べている最中なら黙っていても問題ない。
だけど食べ終わってしまったなら、残るのは気まずい沈黙と何をしていればイイのかというプレッシャーだ。
俺は人見知りとかあんまりしない方だけど、なんかこいつら取っ付きにくいというかあからさまに変だろ?
突っ込みどころ満載過ぎて逆に隙がねーよ。
むしろめんどくせーよ!!
おまえら先になんか喋れ!!
そして先に自己紹介くらいしろ!!
なんて心の中で絶叫しながら大好物のカレーをかっ食らっていたら、隣で蕎麦を啜っていた瓜生が独り言みたいに、だけど皆に聞こえるように言った。
「錦ぃ」
「はふ?」
唐揚げを頬張りながら答える俺。
「おまえさぁ、こういうカスガマロ君みたいな厄介で面倒臭くて手がかかりそうな奴のことさぁ」
「・・・・・?」
「大ッ好きだろ?」
ぶふぉー!!
人間、食べているときに驚くと本当に口の中の物を噴出すものなんだと初めて知った。
いや、体験した。
体感した。
肉汁たっぷりの唐揚げが、無残にカレーの上に転がる。
「な、な、な、ナニ言っちゃっての? 瓜生君???」
「友達になっちゃえよ」
と親指を立ててウィンクする瓜生。
「は?」
「う、嬉しいです」
とカスガマロ。
「へ?」
「オレの春日麿がそう言うんだったらし方がない。泣かすなよ」
とヨロキ。
「ほ?」
「ほら、成立だな」
と瓜生。
え、え、え、---!!!
「朝、言えなかったけど・・・・」
そこで俯いて例の如く言い淀むカスガマロ。
「ほら、頑張れ!」
とカスガマロの背中をばしっと叩くヨロキ。
うん、分かったと咳き込みながら恥入りながら微笑むカスガマロ。
お、おまえらいったい何やってんだ!!
「錦君のことが前から好きでした」
ええええーーーー!!???
そして同時にヨロキが立ち上がった。
「えええええええええーーーーー!!!!!?????」
アレ?
なんでヨロキの方が俺より驚いてんの?
「ちょちょちょっと待てぇーーい!!
春日麿、それはいったいどーゆーことだ!?
好きはちょっと言い過ぎなんじゃねーか?」
「そうかな」カスガマロは顔を真っ赤にしてぼそりと言う。「じゃあ、言い直すと、ずっと憧れてました」
「へぇ、どういうところに?」
瓜生が面白がっているように訊く。
「あの、えっと・・・」
「別に無理して探さなくてもイイんだぞ」
ヨロキが口を挿む。
無理ってなんだ、無理って。
「錦君は、いつも明るくて行動力があって楽しくてクラスの中心で誰からも好かれてどんな時でも前向きで、それでいて」
「いや、ストップ」
「え?」
「それ、いったい誰のこと言ってんの?」
「おまえのことにきまってんだろ」
当然だ、とヨロキ。
「ふざけんなよ。俺のいったい何を知ってんだ?
俺の何を見てたっていうんだ?
だいたい俺はおまえに見られてた憶えはねーぞ!?」
ガタンと音をたててヨロキが立ち上がった。そしてそれを制するようにカスガマロはヨロキの手を掴んだ。
「ご、ごめんなさい。そうですよね、気付かないですよね、それでも僕は・・・」
「もうイイよ」俺も椅子から腰を上げる。「瓜生、もったいないからカレー食べてくれよ。俺はもういらない。教室に先に戻ってるわぁ」
「おまえが吐き出した唐揚げのってるけどな」
「う、まぁ、適当に」
「おい、待て」
ヨロキの声は無視する。
「カスガマロ君、自分の理想を錦に投影しちゃぁ、ダメだぜぇ。あいつには荷が重過ぎる。そりゃあ錦でも逃げ出したくなるってもんだ」
瓜生のやつ好き勝手言いやがって。しかも聞こえるように。
俺は足早にテーブルを離れ食堂から出た。
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