オレは私立日高見学園高校1年、佐伯主税16歳。
野球部所属。
1年生だけどレギュラーに選んでもらい、5番でライト。
今年は甲子園狙える勢いで、
練習もハンパなくキツイ。
毎日毎日ヘトヘトで、家に帰ったらメシ食って風呂入ったら速攻で意識失うレベル。
だからな。
あの、なんつーか、いろいろ他の事やってる暇がねーっつうか。
うん、それだ。
その所為だ。
そんな訳で朝起きたら、
夢精してた。
ま、まぁ、夢精とかよくあるよな。
健全な高校一年生だもん、あって当然して当たり前だ。
問題は、夢の内容、か?
いや、別におかしくはないんだけど、むしろ最高に興奮したわけなんだけど。
部活終わって運動部棟のシャワー室でシャワー浴びてると、
オレのシャワーブースに突然ニシキの奴が入ってきたんだ。
もちろん素っ裸で。
突然のことでびっくりしてると、裸のニシキがオレに抱き付いてきた。
「うわっ、ちょ、やめろよ、って・・・」
ちょっと抵抗しようとするけど、ニシキの奴股間をオレの体にぐいぐい押しつけてくる。
「だ、ダメだって、そんな、に」
段々オレのモノも刺激されて気持ち良くなってきて。
そしたら今度は乳首をレロレロと舐め始めやがって。
「あぁ、はぁ、ニシキ、はぁはぁ・・・」
き、気持ちいい・・・。
そこで目が覚めた。
ねっとりとした後悔と共に。
うわー、やっちゃったよー。
パンツべとべとじゃん。
汚れたパンツは洗濯カゴの底の方に隠した。
完全犯罪完了、これで事件は迷宮入りだ。
そう願いたい。
「なぁ佐伯、錦知らねぇ?」
「え!? あ!? ナニンナニ? オレは何にもしてねーぞ!!!」
テンパって机から体を起こしたら休み時間だった。
どうやら一時間目の授業は終わったらしい。寝てたのかよ。
目の前には不審な目で見ている瓜生がいた。
「おまえ、錦になんかしたのか?」
「え? は? だからオレじゃねーよ」
「じゃあ何なんだ? 白状しろコラ」
こうなった瓜生から逃れることは出来ない。
オレは観念して夢の話を打ち明けた。
「実は・・・」
「ホウホウ、いいねいいね。良い兆候じゃねーか」
良く分からないが、瓜生はオレが錦で夢精したことを喜んでいた。
顔を真っ赤にして恥を忍んで告白したのに、拍子抜けだ。
「何きょとんとした顔してんだよ」瓜生はニヤニヤしながら肩に手を乗せ、顔を寄せてきた「別におかしいことなんてねーんだから、その調子でぐいぐいいったれ。男とやって何が悪い」
前から思ってたんだが、瓜生の価値観って結構くだけてるよな。
「話が盛り上がったところで悪いんだが」瓜生は少し間をおいて、真剣な表情になった「その話題の錦が授業に出てなんだよな。おまえ、なんか知ってる?」
なに?!
錦が授業に出ていない!?
瓜生ならともかく、錦にとってはもの凄く珍しいことだ。
よっぽどのことがあったに違いない。
「なんだよその、オレならともかく錦じゃありえない、みたいな顔は」
げ、なんで分かった、瓜生。
「げ、なんで分かったって顔してんぞ。佐伯顔に出過ぎ。試合ではポーカーフェイスかニヤけてるかどっちかにした方がいいぞ」
ニヤけ顔は有効なのか?
「まぁオレのことはいいとして、錦が授業に出てないのか? オレは何にも知らない」
「そうか・・・」
瓜生はそう呟いて窓の外の方に視線をやった。
「確かに錦にしては意外だけど、なんか心配なことでもあんのか?」
「うん、まぁ、最近なにかと物騒だからなぁ。このまえのテロリスト事件みたいに」
瓜生はなんとなく曖昧な感じで答えた。
「そうかぁ」
確かにそうだけど、あんなテロリスト立て籠もり事件なんてそうしょっちゅうあるもんじゃないだろう。
あるとすれば交通事故とかかな?
「家には連絡してみたのか?」
「ん、ああ。けどアイツんち誰もいねーだろ、昼間」
「あ、そうだよなぁ」
「バイト先には電話してみた。そしたらいつも通り新聞配達終わって、学校に向かったてよ」
「おお、さすが瓜生」
行動が早い。
「ま、この件はオレに任せろ」
瓜生は軽いノリで言った。あるいはそう見せたかったのかもしれない。
「なんだよ、それ」
なんかハブられてるみたいで嫌だった。
「バカ、おまえは今大事な時期だろ? 甲子園、オレも錦も連れてけよ」
「あ、でも!」
「心配すんな。明日試合だろ? 任せとけ」
強い言葉を残して、瓜生は予鈴とともに教室を出て行った。
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