ニシキが授業に出ていない。
これはもの凄く珍しいことだ。
何の連絡も無しに。
しかも連絡が取れないまま。
電話にもメールにも反応が無い。
早朝バイトの新聞配達は終えて学校に向かったという。
しかし学校には来ていない。
思い当たる場所は見て回ったから確かだ。
佐伯も知らないと言っていた。
なんだろう、考え過ぎだろうか。
いや、
何かが起こっている、
何かに巻き込まれている、と考えた方が自然だ。
特にここ最近のこの場所では。
しかしニシキは御祖家とも無関係な一般学生だ。
異能系ではなく、日常的なトラブルの線も有り得る訳だ。
何らかの事故だったり、トラブルだったり。
たとえば道に迷ったお婆さんを助けて道案内をしてやったりとか。
もしくわ本当に可能性の低いことだが、普通にサボりだとか。
いくらこのあと授業1つ終えたら一学期の終業式だからといって、
あのニシキが学校をサボることはそうそう無いはずだ。
だって学校は今は亡きあいつのおやじさんとの約束の一つなんだから。
「学べる事は、学べる時は、ちゃんと学べ」
それがあいつのおやじさんの言葉だ。
しゃーない、今やってる二時間目の授業が終わったら、
このオレが終業式サボって捜索してやるか。
ん?
ふと、隣りの席が空いているのに気付く。
あれ?
毎度の事ながら存在感薄くて気付かなかったけど、
春日のやつも朝から居なくないか?
んーん、しかしあいつ場合繋がってる奴等が相当だからなぁ、
何があってもおかしくないし、何があっても大丈夫だろう。
もし錦と春日の件が同じ原因だったら、春日繋がりであのいけ好かない野郎に堂々と訊きだせるだろうしな。
反則存在の御祖香久夜に。
ということで、二時間目の授業が終わって、オレはさっそく荷物を持って、学校の外に出た。
「タスキさん。どこに行かれるんですか☆」
振り返らなくてもわかる。
それは面足千万喜の声だ。
「ん? ちょっとな」
「終業式もサボってですか?」
「ああ」
「ボクも行きます☆」
「・・・・・・」
こいつの場合、止めても断っても何だかんだ言って絶対付いて来るんだろうな。
オレはその無駄な努力を想像してげんなりした。
「なんだか面白そうですね☆ わくわくします」
まだ危険があると分かった訳じゃねーし、コイツが居た方が何かと便利かな?
「まず、ここがバイト先だ」
オレ達は地域限定の新聞社の前に立った。
印刷所も備えた小さな会社だ。
「で、ここからニシキさんは自転車で学校へ向かった、と」
千万喜が自分に言い聞かせるように確認した。
「ああ。とりあえず、あいつのいつも通る道を辿っていくか」
そうやって歩き出した訳だが、それにしても暑ぃな。
梅雨が明けて明日から夏休みという時期。
当然って言えば当然か。
「しかしタスキさん、何か事件性のようなものはあるんですか?」
千万喜は汗1つかかずに訊いてきた。
「ん~、それとなく警察に電話したけど、朝からこれといって通報やおかしな事はないらしい」
「なるほど~☆ 高校生一人が失踪したかもしれないのに、情報は無い」
「問題はソコなんだよな。もし事件なら事件で、普通のヤツだったらまだ何かしらの情報があるかもしれない、残っているかもしれない。だ~がしかし、これが普通の事件ではいとすると、情報を得るには普通のことしてたらダメだってこだ」
「普通ではない、とすると☆」
「ああ、なんらかの能力者が係わった異能の力で引き起こされた事件の場合だ」
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