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藤巻舎人 脳内ワールド

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私立日高見学園(10) 児屋根春日

「か、香久夜さん!!」
思わず喜びの声を漏らしてしまった。
不覚にも・・・。
肩に廻された手には、ドランゴンみたいな紙ヒコーキが。
隣りには、香久夜さんの笑顔が。
「何道草くってるんだ?」
「え、いや、その・・・」
「おまえはよくよく奇人変人に絡まれるタチだなぁ。ワザとなのか?」
「ワザとって、どうやるんですか・・・」
「こちらが知りたいくらいだ。その厄介な体質改善の為に、ホットヨガでも始めたらどうだ?」
まさかのホットヨガ。
それで改善されるなら今すぐ始めますよ。

「あれ~、おかしいなぁ。メガネ君とは今の今までこちらが話していたのにぃ」
僕と香久夜さんの会話に強引に入ってこようとするズレた人。
しかし香久夜さんが一蹴する。
「あ? 今、我が無能なる弟子とサシで話をしている最中だ。見世物ではないぞ、部外者はとっとと往ね」
あっれ~、あの人を完全無視ですかっ!?
まぁ、僕も余り係わりたくないから良いですが。
「ということで、これ以上クズみたいな事に巻き込まれる前に、戻るぞ」
香久夜さんはそう言って僕肩を組んだままズレている男の人の脇を何事も無かったように通り抜けた。
「ねぇ、クズみたいな事ってもしかして、オレのコト~?」
背後から掛けられる言葉も無視して歩き続ける。
「おい、無視すんなよ」
突然、声が前にきた。
いつの間にかズレた人は僕達の正面に立っていた。
また、だ。
「なぁなぁ、カグヤって、あれでしょ? 御祖香久夜。オレ知ってるよ? 久方振りの『スメラギ』なんでしょ? すっげー」

どうするんだろう、これ以上無視しようがないんじゃないだろうか。
と思った僕はまだまだ甘かった。
香久夜さん、それでもズレた人の脇を通り過ぎた。
フツーにスルーしたよ!!この人!!
しかし、更に僕等の前に立ち塞がるズレた人。
負けず嫌い!?お互いに。
「おい、いつまでもそんなガキみたいな手が通ると思うなよ?」
ゆらりと伸ばしたズレた人の手には、日本刀が握られていた。
え? どこから?
「そこらを歩いてる人畜無害な学生どもを、コレで軽く引っ掛けてもイイんだぜ? それでもアンタはガン無視決め込むことが出来るのかい?」 
ちょ、ちょっとこの人とうとう無差別通り魔宣言しだしましたよ!?
ど、どうするんですか? 香久夜さん!!

「そうムキになるな。別に無視などしておらんよ」香久夜さん、穏やかに言ってるけど顔がニヤけてますけど。「おまえが邪魔なだけだ」
言っちゃった。
余計な事言っちゃった。
「へ・・・、へ~」うわ、あの人顔引きつっちゃってるんですけど。「このオレに向かってそういう口の利き方するんだぁ」
「ふん。誰に対してもこんな口の利き方だぞ、気にするな、奇杵冷(クシキネ スズシ)」
え? クシキネスズシってズレた人の名前?
香久夜さん、この人の事知ってるの?
「ははっ。オレのとうに捨てた名前を、時のスメラギ様に知って頂いているとは、光栄だね。しかしねぇ、スメラギっていうのはどうも話でしか聞いたことのない存在な訳で。ホントのところ、どうなのかぁ、そのジツリョクってやつはさ!!」

斬られる!!
っと確実に思ったけど、無事だった。
何故かスズシさんの動きが止まった。
何がどうしたんだろう、香久夜さんがなんかしたのかな?
でも違うらしかった。
日本刀を構えるスズシさんの後方に、明らかにこちらに近づいて来る男の人が見えた。
灰色の着流し、腰に佩いた日本刀。
まるで時代劇に出てくる剣客だ。
「おまえの様な奴に、わざわざスメラギが手を下す事もなかろう」近づいて来る人が言った。「え? スズシ。数年振りに姿を見せたと思ったら、なんだその体たらくは?」
随分と旧知の仲のような口調。
「ふん、久し振りですねぇ、兄上!!」
スズシさんが振り返えることなく答える。
こちらに向けたままの顔が残酷に笑う。
きょ、兄弟なんですか? お二人は!?

『おい、春日』
不意に香久夜さんの声が聞こえた。
驚いて顔を横に向けたけど、口を開いた気配が無かった。
念話らしい。
『どうしたんですか?』
『人払いを頼む』
『えっ?』
『最大限の範囲で人を寄せ付けるな』
『そ、そんな。急に言われても、無理ですよ!!』
『おまえはバカか? オレが出来ない奴に無理難題を押し付けると思うか? 出来るから言ってるんだ。無理じゃないから頼んでいるんだ。おまえはこの御祖香久夜の弟子だろ? 自信を持て。自分が信じられないのなら、オレを信じろ。』
変な話だけど、自分を信じられなくても、香久夜さんなら信じられる気がした。
この人が言うのなら、可能なんだろう。
そう思わせてしまう、信じさせてしまう、どこまでも深遠で深淵。
傍若無人で絶対無比。
そんな人に、信頼されているなら、出来る気がする。
そう、僕は出来るはず。
香久夜さんが居てくれるなら、怖くない。
この人に比べたら、自分の力など怖くない。

ああ、僕は自分が怖かったんだ。
僕は受け入れる。
自分への恐怖を受け入れる。
世界への恐怖を受け入れる。

うん、怖くないんだ。
香久夜さんが居る。
そしてみんなが居る。
僕は独りじゃない。


『上出来だ』
え?

気が付くと、周囲から僕達以外の人影が消えていた。
この広場のどこにも。

『これでこの広場には誰も居なくなったし、誰も近づこうとしないし、ここで起こっていることは見られないし気付かれない』
そういう事なんだ。
それが結界。
『よくやったぞ、不詳の弟子よ』
香久夜さんの心の言葉が、あたたかく心地よく、胸を満たした。



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HN:
藤巻舎人
性別:
男性
趣味:
読書 ドラム 映画
自己紹介:
藤巻舎人(フジマキ トネリ)です。
ゲイです。
なので、小説の内容もおのずとそれ系の方向へ。
肌に合わない方はご遠慮下さい。一応18禁だす。

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