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藤巻舎人 脳内ワールド

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私立日高見学園(12) 児屋根春日

大学キャンパスの広場で、スズシさんが日本刀を頭上にかざした。
「そろそろイイぞ、妙見!!」
その声に呼応するようにして、スズシさんの背後の風景にひびが入った。
まるで卵の殻みたいに。
だけど、有り得ないよね?
なにも無い空中に、ひびが入るなんて。

「よ~く見ていろ。これがおまえ達がこれから付き合っていく現実の一端だ」
香久夜さんが自慢気に言った。
何故に自慢気?
空間に入ったヒビから、黒煙が、というより墨汁というかイカの墨みたいな質量感のある闇がムクムクと溢れ出し、刀をかざすスズシさんの体を覆っていく。
「ハハハ!! じゃぁな、スメラギ!!もっと遊んでやりたかったけど、オレもいろいろ忙しくてねぇ」
その時、香久夜さんが叫んだ。
「トナウ!! 放っておけ!!」
見るとスズシさんのお兄さんであるらしいトナウさんが、腰の刀に手を掛けて、今にも飛び出して行きそうな体勢をとっていた。
香久夜さんは、それを制したのだ。

小さな雷光のような火花をチラつかせた闇にスズシさんの体は完全に呑まれ、やがて背後のヒビへ吸い込まれ、跡形も無く消えてしまった。
「ふん、ようやく往ったか」
香久夜さんが面倒臭そうに呟いた。
すべての気配が消えた後、トナウさんがこちらを、正確には香久夜さんを見た。
「トナウらしくなかったじゃないか。兄の立場は棄てきれんか」
「それもありますが・・・」
「あいつの持っていた太刀。気付いたか?」
「ええ、ただならぬ気配が」
「あれは、『荼毘丸』だ」
トナウさんは無表情のまま答えない。
「スズシがウチから持ち出したんだったな」
「申し訳・・・、これは奇杵家の失態」
「良い。別に責めている訳ではない。次の機会には手厚く盛大にもてなしてやれ」
香久夜さんが楽しそうに笑う。
「はい」トナウさんは軽く頭を下げた。「では、警戒を継続しつつ、事後処理にあたります」
「ま、もう大丈夫なようだがな、適当に収めてくれ」
うーん、なんだか香久夜さんがもの凄く偉そうだ。
いったいこの土地はどうなっているのか。

「かーぐーやー、てぇーめー」
背後から聞き慣れた声が聞こえてきた。
振り返ると、そこには万木君が居た。
トナウさんと同じように、あの裏山の時と同じように、刀を帯びて。
「おお、トキジク、遅かったな。メンタリスト☆イリュージョンはもう終わったぞ?」
「そうじゃねーよ。おまえ春日麿をなに危険な目に遭わせてんだよ」
「危険な目ぇ? バカも休み休み言え。あんなもの、羽虫が部屋に迷い込んできたようなものだろ」
「まぁそうだけど・・・」
この2人にかかれば、大抵の事は羽虫程度のものになってしまうのかもしれない。
どんだけ桁違いなんだよ、この2人。

「春日、おまえもそろそろ覚悟と自覚を持ってもらわないとな」
突然、あからさまに怪しい事を言い出す香久夜さん。
「え? と言いますと?」
もうとぼけるしかない。
猛烈に嫌な予感がする。
「トキジクと並んで、オレの片腕となる覚悟とその自覚だ」
「えっと、・・・ぜんぜん意味が分からないんですが!?」
猛然と自分の無能さをアッピールしてみるけど、無理な気がする。
「近い内に、お披露目を考えている。『鏡の臣・春日』と『剣の臣・非時』として、2人で我が左右に侍り、務めを全うすることを切に願う。以前よりもましてな」
ん?
え?
以前?
「ようやく揃ったんだしな、あの時の以来か?」
香久夜さは懐かしそうに僕と万木君を見る。
あの時。
万木君の言葉の端々にも表れる言葉。
遠い遠い昔、想像すら及ばない、1万年以上前のお話。
覚えていない、身に覚えのない、未だ語られていない別の物語。
その時代、いったい何があったのか。
現代にまで繋がる大きな謎。
すべてはそこから始まっているのかもしれない。
少なくとも僕はそう憶測している。
断片的な情報の寄せ集めからではあるけど。

「ま、おまえ等には事実上関係ないんだが、この土地に居る以上、御祖家の連中とは付き合っていかなきゃならんからな、その辺は適当にしてくれ」
御祖家。
香久夜さんの氏姓。
グローバル・メガコングロマリットたるMIOYAグループ。
その裏の顔のように存在する、異能の者達の集団。
それらそべての総帥にして、僕達が通う日高見学園高等学校の理事長、御祖香久夜さん。
彼は僕に片腕となる覚悟と自覚を持てと言った。
魔犬に襲われ、テロリストに襲われ、詭弁を弄する異能者に襲われ、これからいったい何が起こるのか。
錦君。
錦君ならどうする?
怖くない?
僕は大丈夫かな?
遣っていけるのかな?

僕の問いは、虚しく中空に吸い込まれていった。








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プロフィール

HN:
藤巻舎人
性別:
男性
趣味:
読書 ドラム 映画
自己紹介:
藤巻舎人(フジマキ トネリ)です。
ゲイです。
なので、小説の内容もおのずとそれ系の方向へ。
肌に合わない方はご遠慮下さい。一応18禁だす。

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