体育館襲撃、もとい人質解放の為に体育館へ向かう間、オレは奇杵語に訊いてみた。
「なぁ、おまらさぁ、簡単に体育館から出てこれるくらいなら、二人でテロリスト達を排除出来なかったのかよ?」
「ん? それ、答えなきゃならない?」
んーん、なんか警戒されてんなー。
ま、オレの事バレてるみたいだし、御祖家相手に立ち回っちゃったからなぁ。
敵ではないけど、味方でもないって認識だろうな、オレ。
「まぁ、良ければ」
「うーん、ま、人質が多過ぎたね。一人でも倒し損ねたら、取り返しのつかない事になる。そのリスクを考えたら、とりあえず外に出ようってことになった訳だよ」
「なるほどね」
あー、妥当なところだよな。
あわよくば、なんて思ったけど、そう易々と情報はくれない訳ね。
「こっちからも訊くけど」とカタリが言った。「瓜生君、君ってなんなの?」
「は?」
漠然とし過ぎてるというか根本的過ぎるというか、答え辛い質問だなぁ。
「あー、何て言うかー」と首を捻ってから「やっぱ、君って、何なの?」とカタリは繰り返した。
うん、その気持ち、わからいでもない。
オレにだって自分がどうなっているのか分からない部分がある。
ていうか半分くらい闇の中といってもイイくらいだ。
しかもその闇はどれくらいの広さなのか深さなのかも見当がつかないときてる。
途中から別の時空へ繋がってるんじゃないかと思える。
それだけ業も深いってことにもなる・・・。
自分の事ながら訳が分からない。
ただオレは、月並みなセリフだが、今を最大限一生懸命、文字通り必死で生きている、生き抜いているって事だ。
「オレとしてもその質問には答えかね・・・」
「おいおまえ等、なに二人でコソコソ喋ってんだよ。もう体育館だぞ」
と奇杵襲が絶妙なバットタイミングで話の腰を折ってきた。
「たく、うるせぇなぁ」
「兄さん空気読め」
「な、ナンダトーー!!」
段々慣れてきたこの双子のパターン。
面白れー。
「じゃ、ぼく達は二階席の奴らを無力化して、同時にドアを開ける」
「おう、そしたらオレがステージを制圧する」
「で? 体育館の後ろ部分に居る連中は? 情報によると今中は予断の許さない緊急事態になってるみたいだけど」
いったいどうゆう情報ソースにリンクしてるんだ?
リアルタイムに更新かよ。
「残りは僅か、脅して投降させる。作戦失敗を悟ればそうすんだろ。無理そうだったら総攻撃だ」
「ま、大雑把だけど、それに異存はないよ。では、武運を」
「ああ、そっちも」
そして奇杵語と襲の双子が体育館の裏に回った。
「てことで、チマキ・・・・って、アレ?」
いつのまにか面足千万喜の姿が見えなくなっていた。
たく、またかよアイツ。
余計なことしてなきゃイイけど、ま、放って置いても大丈夫だろう、アイツなら。
どうやったって死にそうにねーし。
しかし、体育館の中が緊急事態って、いったいどーなんてんだよ。
「あなたのお友達が危急を要する事態に陥っています」
え?
オレは周りを見渡す。
しかし誰も居ない。
今の声、どっから・・・?
「あなたの頭の中、意識へ直接話しかけています」
また声が聞こえた。
・・・・・、テレパシーみたいなものか?
「そう捉えてもらって結構です」
・・・・・、これがカタリの言ってた情報網って事か。
「今から体育館内の状況を送ります」
「は?」
と次の瞬間、目の前に、いや、頭の中に体育館の中の映像が再現された。
しかも一方向のカメラ画像っていうものではなく、
全方位立体映像として。
「これ以上はあなたの脳に過負荷となりますから」そして映像は消えた。「状況は把握できましたか?」
「・・・・、ああ、十分だ♪」
「では、御武運を・・・」
「・・・・・・」
スッゲー、なに今のスーパー・インポーズ!!
御祖の奴等、とんでもねーカード持ってんなぁ。
それやぁ、隠したくもなるわなぁ。
「ま、すべては整ったし、行ってっきますか!! 待ってろ、錦、佐伯!!」
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