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藤巻舎人 脳内ワールド

藤巻舎人の小説ワールドへようこそ! 18歳以下の人は見ないでネ

   
カテゴリー「私立日高見学園 第2章」の記事一覧

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私立日高見学園(16) 佐伯主税

劇が始まるのかと思っていたら、ステージにはマシンガンを携えた男達が表れて、よく分からないけどそいつらのもとに新しく来た世界史の先生が行ったら、拳銃で頭をぶち抜かれた。

とても人間がたてるものではないような音をたてて、体育館の床に崩れ落ちた。

オレ達は戦慄に襲われた。
ただの高校一年生のオレ達に、
いったいどうしろっていうんだ?
いったい何が出来るっていうんだ?

黙ってろと言われた。
騒ぐなと言われた。
大人しくいていろと言われた。
動くなと言われた。
抵抗するなと言われた。

オレ達は人質らしい。
何に対してのものかわからないけど。
何もしなければ、何もしない、と言われた。
さあ、オレ達は、どうしたらイイ?

落ち着いてくると、錦や瓜生の事が気になった。
こっからでは姿は見えない。
見えたとしても、どうすることも出来ない。
何もしなければ、何も起きない。
安全無事でいられる。それを気休めにする。
あいつ等の言う事を信じれば。
信じられれば、の話だけど。

テロリストだか何だか正体不明の武装集団は、ステージに居る5人だけではないらしかった。
最初に、見張りを適切な人数配置していると言っていたけど、それら以外にもいるらしい。
どこからともなく湧き出てきて、ステージに向かってパイプ椅子に座るオレ達の背後、体育館の後ろ半分で何かを始めやがった。
オレは最後部列に居るから、チラチラと後ろを盗み見た。

壁に黒い暗幕を垂れさせ、その手前にハンドカメラを設置している。
幕には何かのシンボルマークらしい模様が描いてある。
これは、良くテロリストがする、犯行声明を録画するものなのか?

「そろそろいいか?」
ステージ上で常に全体に目を光らせている5人の内の1人、坊主頭の男がマイクを通して言った。
カメラなどのセッティングをしていた奴等の1人が、「出来ました」と言った。
「よし、始めろ」
と坊主頭はステージの袖の方に向かって言った。
どうやら裏にも仲間が居るらしい。
すると、

『ドーン!!』

という爆発音のようなものが外から聞こえ、体育館全体が、窓ガラスが、天井の照明が、体の内臓まで、重く震えた。
全員が一瞬体をすくめ、爆発がここではないと悟ると、みんな騒然となり見えない校庭や校舎の方に顔を向けた。
「今度は何だよ・・・」
隣りに座る下照幟がボソリと呟いた。

「動くな!! 騒ぐな!! 座ってろ!! お前たちには問題無い!! これは校舎に居る用無しの生徒等を外に追い出す単なる仕掛けだ!! 何でもないから静かにしてろ!!」
銃口をこちらに向け、坊主頭は叫んだ。
非常ベルが鳴り響き、外から緊急放送の声が聞こえてきた。
その放送は、避難勧告する教職員のものではなく、すぐそこのステージ上に居る、坊主頭のものだった。

『全職員、生徒にお知らせする。今、無人の音楽室を爆破した。これは警告だ。速やかにこの校舎から出るように。猶予を10分やる。それ以上かかるなら、今度は死傷者出るのを厭わずに校舎を爆破する。既に至る所に爆弾は仕掛けてある。妙な考えはせずに、速やかに校舎から出ること。10分だ。それ以上は待たない。さあ、とっとと出て行くように。それと、我々は体育館を占拠している。くれぐれも体育館には近づかないように。もし近づく者があれば、容赦無くそれを排除する。生死は保証しない。以上だ』

なんてこった。校舎に残っている2、3年生は全員逃がすんだ。
警察とか来たらどうするんだ?
まるで隠そうとしていないじゃないか。
「おいおいどうすんだよ。おれ達いったいいつまでここに居ればイイんだ?」
幟がぼやいた。
「さあな」
「それじゃ済まねぇんだよ。今日の練習はどうなんだ? それに、野球部員に怪我人でも出たらどうすんだよ、クソ・・・」
幟は椅子に深く腰掛け、ポケットにいつも忍ばせている硬球を苛立たしげに握った。
ホントこいつの頭の中は野球の事しかないんだな。こんな時まで、まったく参るぜ。

いつの間にか、背後で、どうやら犯行声明の撮影らしきものが始まっていた。
固定したハンドカメラとは別に、スマホみたいな端末でも撮影している。そんままネットに流すのか?
しかし、こうやって眺めていると滑稽だ。
まるでコントだ。
目出し帽を被った二人の男が、カメラに向かって犯行声明を読み上げている。
「ちっ、下らねぇ・・・」
幟は舌打ちした。
犯行の動機目的は、だいたいこうだった。

『МIOYAグループのメイン企業たる御祖製薬は所有している特許をすべて放棄し、すみやかに薬品を貧困国に配布すること』

ほんとはもっと長くて厄介だったんだけど、聞き取れたのとオレの理解出来た範囲でこんな感じだった。
「お熱いねぇ」
幟が愚痴る。こいつはホント野球以外どうでもイイって感じだ。

しばらく何テイクも撮影した後、ステージ上の坊主男が、不意に口を挟んできた。
「それくらいでイイだろう。次はオレ達が本気だということを示すのに、人質も一緒に撮影しろ」
実際体育館内は静かだったけど、その言葉の後、更に静まり返ったようだった。
生徒全員が、息を呑む音が聞こえてたようだった。
「そうだな、さっきからそこでこそこそとお喋りしてる奴、そう、そこのメガネの後ろ、お前だよお前、ちょっと立て」
そしてみんなが椅子に座る中、立ち上がったのは、錦だった。
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私立日高見学園(15) 児屋根春日

僕はパイプ椅子に座ったまま、身動き一つとれない。

シェイクスピアのオセロが上演されるはずだった体育館のステージ上には、機関銃を持った5人の男達が並んでいた。
その内の1人、坊主頭の男が立っている場所の下には、僕たちのクラスの新しい担任教師、龍樹先生の死体が転がっているはず。あ、転がっているなんて、失礼か。
はず、というのはここからでは死体は見えないから。
座ったままでは、何列も前の状況は分からない。
だけど、頭を正面から打たれるのを見たんだ。
これは映画じゃない。
だけど、銃をこれでもかと乱射して人間が蟻みたいに死んでいくアクション映画のワンシーンをみているような錯覚に陥った。

「これは現実だ。さっさと受け入れろ」

坊主頭の男の無慈悲な言葉が突き刺さる。
その言葉が現実逃避から無理矢理引き戻す。

裏山の一件といい、今回といい、いったい僕の周囲はどうなっちゃったんだ?
今までは、何も起こらなかったのに。
誰からも無視されていたのに。
世界のすべてから見放されていたのに。
とても、静かだったのに。

ハッ!! 
そうだ!!
もし香久夜さんの言う通り、僕に拒絶する力があるのなら、
今まで通り人を、周りを、拒絶すれば誰にも気付かれずに逃げられるんじゃないのかな?
ここから出て行けるんじゃないのかな?
外に知らせに行くことが出来るんじゃないのかな?

「ようやく落ち着いたか」
ステージ上の坊主男がマイクで話し始めた。
「一応説明しておく。お前たちの今置かれている立場を。何も知らないと逆におかしな事をしでかしかねないからな。
お前たちは人質だ。だから大人しくしていれば悪い様にはしない。しかし、妙な動きをしたりこちらの命令を聞かない場合は、容赦しない。
まぁ、これだけ居るんだ、数人減ろうと何の問題も無いだろ?。前例は示した通りだ」
そう言って、拳銃でステージの下を指した。
龍樹先生の死体があるはずの場所を。

「おい、春日」
突然耳の後ろ辺りで声がして、飛び上がるくらいに驚いた!!
「バカ、動くな、振り向くな、そのまま聞けよ」
「なんだ、錦君かぁ、はぁはぁ」
あ~、驚いた。心臓に悪いって。まだドキドキが治まらないよ。
「あいつらのこと、どう思う?」
「どう思うって・・・・、わかんない。テロリスト?」
「・・・、うん、そうかもな」
「人質、とか言ってるしね」
「それじゃ、どっかに何かを要求するんだろうな。俺達の命を楯にして・・・」

僕達の命。
生きていく力。
この世界に存在するための源。
ここに居るために必要な条件。
喜びや悲しみや愛しさや虚しさや希望や絶望や、その他諸々の集積。
それが今、この無頼の訳の分からない人達によって、風前の灯になっている。
彼等のちょっとした気まぐれで、ちょっとした動作で、簡単に吹き消されてしまう。
まるで、ゲームみたいに。
なんだか嫌だなぁ、そういうの。
落ち着かないなぁ、こういう状態。

「俺達、どうなるんかなぁ」
ふとした錦君のその言葉に、僕は抑えようもない不安の匂いをを感じ取った。
あの錦君が、不安がってる。
そこで、万木君の言葉を思い出す。

『友達も信じろ。何かあったら守ってやれ。おまえにはその力がある』

ああ、どうかしてる僕は。
自分だけここから逃げ出せる、
自分だけここから逃げ出そう、
なんて考えていたなんて!!!
ダメだダメだダメだ!!!
今度は僕が守ってあげなきゃ。
僕にはその力がある。
万木君だって、香久夜さんだって言ってたじゃないか。

怖いけど。
正直怖いけど。
本当に自分に力があって、みんなを守ってあげることが出来るか分からないけど。
自分を信じる。
今までの自分の人生を信じる。
世界から無視されてきた人生だったけど。
世界を拒絶してきた人生だったけど。
それが僕自身だったんだから。
それが今の僕を成り立たせているんだから。

僕は僕であって、僕以外でも以上でも僕以下でもない。
要らないものなんてない。余分なものなんてない。余計なものなんてない。
全部ひっくるめて、全てが僕なんだ。
それが僕の命。
命を、軽々しく扱う権利誰にもはないんだ!!

私立日高見学園(14) 瓜生襷

オレは小学校を卒業して中学へ入学する前の3月に、両親とアメリカへ旅行に出かけた。

そしてラスベガスへ行く途中、モハーヴェ砂漠を通るハイウェイで交通事故に遭遇した。乗っていたバスの運転手が居眠りをしていたらしい。
両親は軽傷で済んだものの、オレは頭を強打し、外傷性脳内出血で病院へ担ぎ込まれた。出血は少なかったが、圧を下げるために手術をし、すべては順調にいった。
ただ、3日ほど意識が戻らなかった。
原因は不明らしかった。

それでも意識はちゃんと戻り、後遺症もまったくなく、1か月ほど入院生活を送り、それから日本へ帰国した。
すべてはとどこおりなく、日常生活がオレを包み込んだ。
だがしかし、当のオレ自身は、決定的に変わってしまっていた。
取り返しがつかないほどに。
後戻り出来ないほどに。
以前を思い出せないほどに・・・。



「・・・・・・・・・・、ん、あ」
なんだかとんでもない騒音の中から抜け出してきた気分だった。
目が開くと、腕や上半身に痛みを感じた。
「痛っ・・・・」
いったいなんなんだ? オレはどうした? ここはどこだ? どうしてここに居る?
動こうとしたが動けない。椅子に座らされ、後ろ手に縛られ、体を梱包テープでぐるぐる巻きになれている。
こ、これは・・・。

「ようやくお目覚めか?」
オレはゆっくりと顔を上げた。
別に驚きはなかった。
まぁ、予想はついた。
ただ、余りに簡単に想像できたから、顔を上げるのも面倒臭かった。
むしろそんな自分に毎回驚かされる。怖さすら感じる。
オレはもう、オレであってもオレではないんだと、再認識する。
目の前には、なんのひねりも無く、案の定、九条魚名が安っぽい笑みを浮かべて立っていた。

「よう、あんた誰だっけ?」
「・・・、そう強がるなよ」
「あっそう? オレはてっきり・・・」
「黙れ!!」
「・・・、つまんねー奴。もっと余裕持て『グッ』・・・」
左側頭部に回し蹴りを喰らった。
向こうも本気ではなかったようだし、オレも構えていたので鈍痛以外ダメージは無かった。
「良く喋るもんだよな、この裏切り者が」
裏切り?
いったいどの裏切りの事を言ったんだ?

「しかし、まだ生きていたとは驚きだよ。てっきり死んだものと」
特に話すこともないので、オレは黙っていた。
「しかもまだその体に居たとはね。気に入ったのか?」
「・・・・・・」
「なんだよ、今度はだんまりか?」
「別に。なんか話したがってるみたいだから、聞いてあげてたんだけど?」
「・・・・、クソが。余裕でいられるのも今の内だぞ」
「へぇ、そいつは楽しみ」

九条魚名の話を聞きながら、観察整理してみた。ここは校舎裏の体育倉庫だ。あの渡り廊下でおそらくスタンガンでやられたんだろう、その後ここに連れてこられたって訳だ。
あの時の状況からいって、こいつは体育館の劇団員に偽装していた奴らの仲間、あるいは何らなの繋がりがあるってこと。
そしてこいつがオレの体のことを知っていたということは、十中八九アメリカの手先であり、劇団連中もおのずとそれに連なるってことだ。
ってことは狙いはあれだってことだが、しかしこの作戦の意味は? 随分まどろっこしい・・・・、これには裏があるなぁ。

「ま、国の判断でね、裏切り者には消えてもらう訳だが、その前に君が今まで知り得た情報を教えてほしんだよ」
「あんた、いつからここに潜入してたんだ?」
「・・・・・、ずっと前、君が来るかなり前だよ。世界最高峰の伝説のスパイが送られてくると聞いて楽しみにしていたんだけどね、まさかこんな形で遭遇するなんて、思ってもみなかったよ。とても残念だ」
言葉とは裏腹に、随分嬉しそうな顔をしている。

「オレのことが妬ましかったのか?」
「ウルサイ!! 僕がどんな思いでこんなクソ忌々しい国に来たと思う?! 最強レベルのセキュリティをかいくぐる為に、怪しまれず自然なかたちで潜入するのに子供の頃から送り込まれてきたんだ。そして耐え忍びながら小さい情報をこつこつと収集して大きな機会を窺っていた。そしたら突然、周囲に張り巡らされていた結界が消失した。こんなチャンスは二度とないだろう。だからすべてを実行に移したんだ。すべてはあるかなしかわからない僅かなチャンスの為にずっと準備されていた。今までの身を削ってきた苦労が報われるんだ。
おまえには分からないだろう。やすやすと他人の肉体を乗っ取り、何食わぬ顔で敵地に侵入出来るおまえにはな!!」

「で、やっと念願叶ったって訳だ」
「ふふん、そうだよ。なんの苦労も苦しみを知らないおまえに、たっぷりと味あわせてやる。こちらに有益な情報を吐いてもらうためにもね。
知ってる? 最近じゃ、いろんなところにAED、自動体外式除細動器なんてものが設置されててさ、この学校も例外じゃないんだけど・・・」
そう言いながら九条魚名はAEDを容器から取り出した。
「本来、心臓が動いている状況だと作動しないんだけどね、そこは軽く細工してさ、いつでもどこでも誰にでも電気ショックを与えられるようにしたんだ。これって、ちょっとした拷問器具になるんだよね」

私立日高見学園(13) 棚機錦

まったくなんなんだよ。
チカラの奴・・・。

って、俺、何怒ってんだろう。
何に対して怒ってんだろう。
わかんねぇや。
・・・・・・。

いーや、分かってる。
分かってるはずだ。

うん、チカラが春日の事、気に入ったみたいだったから。
別にイイじゃん。春日は俺の新しい友達だぜ?
それと昔っからの幼馴染のチカラが仲良くなったら、イイことじゃん。
嬉しいことじゃん。

だけど・・・・。
だけど、なんか嫌だった。
そんなの無理は百も承知だけど、
俺だけを見ていて欲しかったんだ、チカラに。
チカラの心の中を、俺だけで一杯にして欲しかった。
俺が居ればチカラの心は満たされて欲しかった。
俺以外、何も欲っして欲しくなかった。

ハイッッッッッ!!!!!!!!
無理無理無理無理、
無駄無駄無駄無駄ぁぁぁぁぁ!!!!
そんなの嫌だ!!
そんなチカラ嫌だ!!
そんなのチカラじゃない!!
俺のことばっかり考えて、
俺のことで頭一杯で、
俺のことしか求めないチカラなんて、い・や・だ!!!

「嫌だぁぁぁぁ!!!」
と勢い余って現実に声に出して叫んぢまった。
廊下を歩きながら。
「ど、ど、どうしたの? ニシキ君」
隣りで春日が怯えた顔して訊いてきた。
「やっぱりなんか怒ってた?・・・・そんなに僕のこと、嫌だった?・・・」
あ、ごめん、春日。やっぱ気にしてたんだな。
そりゃ、気にするよな。
俺、マジでヤな奴だよな。
「そんな訳ねーじゃん!! 俺は春日のこと大大大好き愛しちゃってるぜぇぇ!!」
「ぎゃ、錦君、そんなに抱き着かなくてもって、チューとかヤメ・・・、あっドコ触ってんの!! そんなとこ、みんな見てるからっ!!」
「なんだよケチぃ、減るもんじゃねーしぃ」

「コラコラ、盛りの付いた仔羊ちゃんたち」
そのおかしな言動は転任教師の龍樹先生だ。
「そーゆーコトは、おうちかトイレでしなきゃダメだよ」
仲良い事は良いことだ、とニコニコしながら言った。
体育館へ移動中の俺らは一瞬静まり返っちまった。
うーん、この先生、いろんな意味で要注意だぜ。

さて、体育館に着いた。
今日は3限・4限を使ってゲイジュツ鑑賞の授業。
体育館で演劇をみるんだと。しかも1年生のみ。
2年生は明日、3年生は明後日らしい。
生で演劇なんてみるの初めてだから良くわからんけど、ま、勉強するよか面白ぇかな?

中に入るとパイプ椅子が並んでいて、各クラス生徒が次々と着席していく。
偶然俺の前の席に春日がきたので、うしろからいろいろイタズラをして楽しんだ。
「もう、錦君、ふざけ過ぎだよ、また先生に何か言われるよ?」
「たく、春日はマジメだよなぁ」
「そういえば、瓜生君、まだ戻ってこないね」
「ああ、そうだな。ま、瓜生のことは心配ねーよ。だって瓜生だし」
そう、瓜生は瓜生なのだ。
どうやったって瓜生だし、なにをしようと瓜生だし、絶対的に瓜生なんだ。
あいつは大丈夫。

「随分信頼してるんだね」
「おう!! って、今、金髪の外人さん見えたぞ?」
「え? どこ?」
「もう隠れたけど、ステージの横」
「シェイクスピアのオセロだから、当然かもね。そういえば知ってた? 今日のお芝居、英語劇なんだよ? 説明聞いてなかった?」
「えええ!! 英語でやんの!? ぜんぜん意味わかんねーじゃん、それじゃ!! これはもう寝るしかねーな」
「えーー!! 決断早っ!!」
「ばーか、迷う理由がわかんねーよ。って、おお? 幕が上がるぞ」
とりあえず一年生全員体育館に集合して、着席したみたいだけど、まだ劇が始まる雰囲気ではないような? 照明もついたままだし。まぁ良く知らんけど。
そして幕が上がり、舞台が見えてくると、静かなどよめきが生徒や先生の間に広まっていった。
そこには機関銃? を携えた男達5人が立っていた。
こちらに銃口を向けて。

「えっと・・・・、オセロって、こういう劇なのか?」
「い、いやぁ・・・、なんか違うようなぁ、斬新な切り口での新解釈みたいな? って斬新過ぎてアヴァンギャルドォォォォ!!」
春日、なんかキャラ違くないか? とりあえず放置。
教員席の先生が立ち上がろうとする気配を察してか、中央に立つマイクを持った坊主頭の男が喋りだした。

「えー、落ち着いて座ってろ。騒ぐな、動くな、立つな。静かにしてろ。抵抗すればそれなりの対処をする。この銃は本物だ。俺達は本気だ。既にこの体育館内には適切な人数を配置してある。ここから出たり逃げようとか思うな。考えるな。とにかく動くな。以上だ」
え、え、え? な、な、なんなんだ!?これは!!
「あ、それと、携帯やその他の通信端末は提出しろ。これからこちらの人間が順次回収にまわる。おかしな真似をした場合、言いたくはないが、怪我じゃ済まない。最悪死ぬことになる、覚悟して行動しろ」
とにかく誰も動かなかった。動けなかった。
混乱していたし、動揺していたし、童貞してじゃなくて動転していた。
この俺も含めて。

だけどそこで、突然大きな声と拍手が響き渡った。
「いやいや、ブラーボォ、ブラーボォ、グラッチェグラッチェ!! あなた方は素敵です、雫さん!!」
な、なんとあの転任世界史教師が拍手をしながら椅子から立ち上がってステージの方へ近づいていった。
ええーーー!!
あのバカ教師頭ダイジョーブなのか? ここにきて日本語ワカリマセンは通じねーぞ? つーか誰ぇーー!?雫さんって??
そして真っ直ぐ坊主頭のおっさんの足元で止まる。
「で? コレ、なんのゲームの宣伝ですか?」
ステージ上の坊主男を見上げて龍樹先生は言った。
坊主男は、無言で腰から拳銃を抜いて、まるでエレベーターのボタンを押すみたいに、自然な動作で、しかも的確に先生の頭向けてに発砲した。

パン!!
と鋭く乾いた音が体育館を切り裂いた。
ここに居た全員が、体をびくつかせたと思う。
一瞬の出来事で良く見えなかったけど、先生の頭から赤黒いモノが飛び散って、ゴトンっと生々しい音と共に床に崩れ落ちた。

そして坊主頭の男がマイクを通して言った。
「さ、警告はしたはずだぞ。
 これは現実だ。さっさと受け入れろ」


私立日高見学園 補足(2)

          <用語解説>
 



【カンナギ】
精霊や上位霊体を自分に憑依させたり、それらと直接交信をしたりして、特定の情報を得る者達。
巫女、あるいはチャネラー的な存在。


【遠見】
いわゆる千里眼。
離れた場所の状況を見たり聞いたり感じたり出来る者達。


【菊桐姫】
キクリヒメ、又はココリヒメ。
水分家(ミクマリ家)の人間で、特に霊力の強い女子に継承される職掌名。


【御祖家】
一般的に呼ばれる「御祖家」とは御祖、奇杵、沫蕩、いわゆる御祖御三家の総称である。
以前はこの三家それぞれに明確な役割が振り分けられていたが、現代ではかなり流動的で曖昧になっている。
基本的にはインド・ヨーロッパ語族に見られる三機能区分に似ている。
御祖が生産性、奇杵が軍事性、沫蕩が祭祀性を司っていた。
しかし上記したように今ではかなり混交している。

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プロフィール

HN:
藤巻舎人
性別:
男性
趣味:
読書 ドラム 映画
自己紹介:
藤巻舎人(フジマキ トネリ)です。
ゲイです。
なので、小説の内容もおのずとそれ系の方向へ。
肌に合わない方はご遠慮下さい。一応18禁だす。

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